部分矯正の特徴と治療法を解説!
歯科矯正と聞くと、お口全体の歯並びを矯正する、といったイメージが強いかもしれません。
しかし、お口の状態によっては全体の歯並びを矯正することなく、部分的・気になる部分だけを整えることも可能です。
それが、部分矯正です。
ただし、ご自分で最初から「歯が1本飛び出しているだけだから部分矯正ができる!」と結論づけることは早計です。
歯科矯正は、歯並びはもちろんですが、歯の状態や患者さんのお口の状況によって最適な治療方法が異なります。
部分矯正とは
部分矯正は、MTM(Minor Tooth Movement)とも呼ばれます。
全体ではなく、歯の気になる部分だけを矯正していきます。
部分矯正では、2〜3本から治療が可能です。
また、全体矯正では2年以上かかる期間も部分矯正であれば比較的短期間で行えます。その結果、費用も全体矯正と比較すると抑えられます。
ただし、部分矯正は適応症例が限られています。
患者さんのお口の状態によって、部分矯正では治療ができない症例もあります。
まず最初に、部分矯正が「噛み合わせ」の矯正には向かないことをご説明します。
部分矯正では噛み合わせを整えることは難しい
噛み合わせの改善は、一般的に奥歯を動かす矯正になります。咀嚼は奥歯で行うことを想像してみて下さい。もぐもぐと噛んでいる時には、顎も動いています。
つまり、顎の骨にも影響するような噛み合わせの矯正は、部分矯正では難しいということです。
無理な部分矯正によって、逆に食べ物が噛みにくくなり、そうすると体全体のバランスが崩れる・歪むといった結果にもなりかねません。
部分矯正を希望していたとしても、その希望にそった治療をしてくれるのが必ずしも良い歯科医院とは限りません。部分矯正ができない場合があること、できない場合には適切な治療方法を提案してくれる、そういった歯科医師に相談することが大切なのです。
部分矯正のメリット・デメリット
噛み合わせの例から、部分矯正に向き・不向きがあることをご説明してきました。
部分矯正のメリットとデメリットをまとめておきましょう。
部分矯正のメリット
- 気になる部分だけを治療できる
- 動かす歯が少ないので痛みが少ない
- 歯を削る量が少なくて済む
- 一般的な全体矯正に比べて治療期間が短くて済む
- 全体矯正に比べて費用も抑えられる
部分矯正では「2〜3本から治療が可能」と前述しましたが、多くは犬歯(前歯から3番目の歯)までを動かす場合がほとんどです。
軽度の出っ歯・すきっ歯といった歯並びの悪さなどは、部分矯正で改善できる良い例と言えます。八重歯を矯正したい、という理由で部分矯正の治療を受ける方も多いようです。
痛みが少ないことで患者さんへの負担も軽減されます。また、治療期間や費用も抑えられることはメリットと言えるでしょう。
次に、デメリットも押さえておきましょう。
部分矯正のデメリット
- 噛み合わせの矯正には向かない
- 歯並びがかなり悪い状態では対応できない
- 歯を削る場合がある
- 歯列の全体矯正に比べて仕上がりが劣る可能性がある
噛み合わせが悪いことが理由で前歯に歪みが生じている場合は、部分矯正では治療ができません。
既にご説明しているように、噛み合わせの根本である奥歯の矯正をしっかり行わずに、前歯だけ部分矯正で整えたとしても、口全体や体のバランスが悪くなってしまうことも考えられます。
手軽そうに思える部分矯正ですが、適用範囲が狭いことがデメリットといえるでしょう。
部分矯正の方法
部分矯正はどのような治療を行うのでしょうか。治療方法をまとめました。
表側のワイヤー矯正
「ワイヤー矯正」は、ブラケットと呼ばれる装置を歯の表面に取り付け、ワイヤーを通し、ワイヤーの力で歯を移動させる矯正方法です。
歯科矯正と聞くと思い浮かべる方も多い、オーソドックスな矯正方法です。
部分矯正でも同じです。
前歯の表側にブラケット・ワイヤーを取り付けることになります。
この時に歯を動かす隙間がない場合には、歯を少しだけ削りスペースを作ります。デメリットでも書いたように、歯を削ることで隙間を作るのです。
また、ワイヤー矯正のデメリットである見た目の悪さですが、透明素材のブラケットや白いワイヤーも登場しているため、治療中の見た目も改善されてきています。
裏側のワイヤー矯正
歯の表側にワイヤー装置をつけると目立って嫌だという場合には、裏側に矯正装置をつけることも可能です。
パッと見ただけでは矯正していると分かりにくいので、見た目や矯正していることを隠したい方に向いている方法です。
ただし、舌が当たる歯の裏側に器具をつけるため、口内の違和感が強めに出る場合もあります。また、食事時の違和感もあるようです。
裏側のワイヤー矯正は、表側のワイヤー矯正よりも費用面で高くなります。また、表側矯正に比べると適用範囲が限られるため、裏側矯正が自分に合った矯正方法かどうか、コストの面や使い勝手の面からもよく検討していきましょう。
マウスピース矯正
透明なマウスピースを歯に被せ、一定期間でマウスピースを取り替えていくことで徐々に歯を動かしていく方法です。
部分矯正といっても、マウスピース矯正の場合はマウスピースを歯の全体に被せる形になります。また、ワイヤー矯正に比べると適用できる範囲が狭いといったこともあります。
最大の特徴は、透明で目立たないという見た目と、1日20時間以上装着しなければならないものの、取り外しも可能なので、食事や歯磨きも普段通りに行えることです。
装着したら外せないワイヤー矯正と比べるとメリットが際立つ印象もありますが、取り外しが可能だからこそ自己管理が大切といった面も忘れてはいけません。
また、費用や期間にはさまざまな選択肢があります。
番外編:セラミック
良く知られている「ワイヤー矯正」「マウスピース矯正」の他にも「セラミック」を利用する方法があります。
セラミック矯正と呼ばれる場合もありますが、正確には歯科矯正治療ではありません。
治したい歯を削り、セラミッククラウンを被せてあくまでも見た目を整える方法です。
デメリットは、健康な歯を削ってしまうことです。
ですが、セラミッククラウンの形状や色が自由に選べるため、短期間で見た目を改善したいといった方が選ばれる方法です。
まとめ
いかがでしたか?
部分矯正について詳しく解説をしてきました。
部分矯正を希望していても、口腔状況によっては部分矯正ができない場合があります。歯科医院で相談した際に、部分矯正ではなく全体矯正を勧められることもあるでしょう。全体矯正を勧めるには理由がありますので、しっかりとドクターの話を聞き、ご自分にあった適切な歯科矯正を選択しましょう。
選択肢で困った際にはぜひこの記事をお役立てください。
さまざまな選択肢がある部分矯正治療ですが、見た目や予算の他にも、治療中にどう過ごしたいかなども視野に入れて比較してみてください。