アンカースクリューって何?どんな効果がある?

歯科医院で矯正相談をしたり治療法について調べている時に「アンカースクリュー」という言葉を見聞きしことがありますか? 聞き慣れない言葉だと思いますが、矯正治療において近年行う件数が増えてきているものです。 矯正治療を検討中の方は、もしかしたら今後行う治療の1つかもしれません。

今回は、アンカースクリューと効果について解説していきます。

アンカースクリューとは?

アンカースクリューとは、チタン製の小さな医療用ネジのことで、「歯科矯正用アンカースクリュー」が正式名称です。 大きさは直径1〜2mm、長さ6〜10mmと種類があり、歯ぐきの上から骨に向かって小さなネジを埋め込みます。

硬く動かない骨を固定源にしてゴムなどを引っかけ、効率的に歯だけを動かす矯正治療法として1990年代後半に登場しました。ネジにかけたゴムから常に引っ張る力が歯に加えられるため、治療期間が短縮し、歯の動かし方の可能性を広げました。

アンカースクリューは「インプラント矯正」と表記されることもありますが、歯を失ったときに入れる人工歯根のインプラント治療とは別物になります。

アンカースクリューにはどんな役割がある?

先程お伝えしましたが、アンカースクリューを埋め込むと

  • ゴムなどを引っかける固定源になる
  • 今までより治療期間が短縮する
  • 歯の動かし方の可能性を広げる

といった役割がありますが、もう1つ大きな役割があります。

それは「動かしたい歯だけを動かせる」です。

矯正治療では「ここは動かしたいが、この歯は動かしたくない」という場合が多いです。しかし、ワイヤー矯正やマウスピース矯正の場合、歯を固定源とするため、動いてほしくない歯まで動いてしまうことがあります。

また、アンカースクリューが登場する前の出っ歯に対する矯正治療は、飛び出た前歯を抜歯してできたスペースに引っ込めるために頭や首に固定源をもつ「ヘッドギア」と呼ばれる装置を使用し、できたスペースに奥歯が寄ってこないようにする必要がありました。 ヘッドギアは今でも使用され、とても効果がある装置です。しかし、1日10時間以上装着しなければ力が発揮されないため、患者様の協力次第で治療の効果が左右されてしまいます。

アンカースクリューはどんな歯並びに効果がある?

アンカースクリューを埋め込んだほうがいい歯並びは以下の4つになります。

  • 上顎前突(出っ歯)
  • 下顎前突(受け口)
  • 開口
  • 過蓋咬合

1つずつ解説していきます。

上顎前突(出っ歯)

前歯が前に飛び出している歯並びです。この場合は、歯を抜いて前歯を引っ込めるスペースを作ることが多いです。しかし、アンカースクリューを埋め込むと、抜歯をせずに前歯を引っ込めて歯並びを改善できる場合があります。

下顎前突・反対咬合(受け口)

下の前歯が上の前歯より前に出て覆い被さっている歯並びです。アンカースクリューを埋め込むことで、下の歯全体を後方(奥歯の方向)に移動させることができ、噛み合わせの改善に導きます。

開口

奥歯でカチッと噛んだ時、上下の前歯が噛み合わず隙間ができてしまう並びです。アンカースクリューを埋め込むことで、強く噛み合っている奥歯の高さを下げる方向に力を加えられます。それにより、下顎の前歯が噛み込みやすくなり、隙間が埋まり噛み合わせの改善に導きます。

開口の場合、上顎前突が含まれている場合があるため、両方に対する処置が必要になります。

過蓋咬合

上の前歯が下の歯に深く覆いかぶさり、噛み合わせが深くなってしまう歯並びです。アンカースクリューを埋め込むことで、上の前歯を上に引っ込める方向に力を加えられます。それにより、上の前歯の位置が変わり、深い噛み合わせの改善に導きます。

アンカースクリューのメリット

アンカースクリューを埋め込むメリットをまとめます。

治療期間の短縮

アンカースクリューを埋め込むと、動かしたい歯だけ動かすことができます。そのため今までより治療期間が短縮する場合があります。

難しい歯並びに対応できる

固定源が歯ではなく硬い歯ぐきの骨に作れるため、上下左右いろいろな方向から力を加えることができます。そのため、今まで動かすことが難しいとされていた方向へ歯を動かすことができるようになりました。

抜歯をせずに矯正治療ができる場合がある

歯をきれいに並べるスペースが足りない場合、抜歯してスペースを確保することがあります。アンカースクリューを埋め込むことで、奥歯を後方に動かすことができるため、抜歯せずに矯正治療ができる可能性があります。

しかし親知らずがある場合は、親知らずを抜かないと歯を動かすスペースが確保できないため、抜歯が必要になります。

アンカースクリューのデメリット

メリットの多いアンカースクリューでの治療ですが、デメリットもきちんと理解しておきましょう。

簡単な手術が必要

アンカースクリューは簡単な手術をして埋め込みます。手術といっても、虫歯治療と同じように歯ぐきに局所麻酔を打ち、専用の道具でアンカースクリューを埋め込むだけなので、麻酔の量は少なく、処置自体も20分ほどで終わることが多いです。

しかし、麻酔が切れると痛みや違和感を感じることがあります。痛みが強い場合は痛み止めを服用したり、歯科医院に連絡しましょう。

取れることもある

埋め込んだ骨や歯ぐきの状態によってはアンカースクリューが取れることがあります。その場合、再度埋め込む必要があるため、取れたことに気づいたらすぐに歯科医院に連絡をしましょう。

別途で費用がかかることがある

歯科医院によりさまざまですが、アンカースクリューの費用は別途で支払う場合があります。また、治療途中に行う場合は初期に提示された費用に含まれていないため、追加費用になることもあります。心配な方は歯科医師に相談してみましょう。

アンカースクリューを埋め込んだ後はどうするの?

アンカースクリューを埋め込む手術の後は、すぐにゴムなどをかけて力を加えるのではなく、1~2週間ほど歯ぐきが安定するのを待ちます。骨とアンカースクリューが固定したことを確認してから、ゴムかけなどで歯に力を加えて動かしていきます。

アンカースクリューはお口の中に出ていて汚れがつくため、清潔に保つことが大切です。 周りに汚れが溜まると歯ぐきが腫れて感染を起こし、痛みが出たり外れたりする原因になります。

そのため、歯磨き粉をつけずにやわらかい歯ブラシやタフトブラシを使い、アンカースクリューの周りをきれいにしましょう。

アンカースクリューは矯正治療中でも必要がなくなれば外します。外す場合は痛みは出にくいため麻酔せずに外すことができますが、もちろん麻酔を使用することもできます。痛みへの不安が強い方は歯科医師に相談してください。

また、外した後は歯ぐきに穴が開いた状態になりますが、1週間ほどで穴が塞がり元の状態に戻ることがほとんどです。外した直後は物が当たると痛みが出ることがありますが、痛みが続いたり強くなった場合はすぐに歯科医院に連絡しましょう。

まとめ

今回はアンカースクリューについて解説しました。アンカースクリューが登場したことで歯の動かし方のバリエーションが増え、今まで治せなかった歯並びもきれいに並ぶようになってきました。

矯正治療をする場合に必ずアンカースクリューを埋め込むわけでありませんが、なりたい歯並びに改善するための必要な処置ですので、歯科医師から提案があった際は納得した上で治療を進めていきましょう。

また、 お子さまの矯正を検討中の方は年齢によってはヘッドギアを使用することもあります。矯正歯科医院ではさまざまな装置から最適な治療法を提案してくれますので、不安がある場合は些細なことでも相談して治療に取り組んでいけるといいですね。

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