マウスピースを外したままはダメ?どんな影響がある?
目立ちにくい装置で歯並びを治せるマウスピース矯正は、近年人気が高まっている矯正方法です。
マウスピース矯正は「1日20時間以上、食事と歯磨きの時以外は装着している」ことが大切で、それを守れないと十分な効果が発揮できないといわれています。
しかし、「どうしても外している時間が長くなってしまう」「装着するのをうっかり忘れてしまった」「大切なイベントがあるため今日は外していたい」「違和感が強くてどうしても装着していられない」ということもあるでしょう。
今回は、なぜマウスピースを外したままはだめなのか、外していた場合どのような影響があるのか解説していきます。
マウスピース矯正はどうやって歯を動かす?
まずはじめに、マウスピース矯正はどのようにして歯を動かすのか簡単にお伝えします。
いろいろな種類があるマウスピース矯正ですが、動かし方は共通しており、マウスピースの形を少しずつ調整したアライナー(マウスピース)を何枚も作製します。
アライナーを交換するごと歯に圧力がかかることで徐々に動き、理想の歯並びに近づいていきます。
マウスピースはどうして装着時間が長い?
マウスピース矯正のデメリットの一つとして、装着時間の長さがあります。
1日20時間以上装着しなければいけないのはなぜ?と疑問に思う方もいるでしょう。
そもそもの歯列矯正で歯を動かす仕組みとして、矯正方法に関わらず、同じ方向に持続的に力を加える必要があります。その際、歯は一度力を加えたら動くということはないため、常に力を加え続ける必要があります。また、力を加えるのを止めると、元の位置に戻ろうとする後戻りが起こります。
つまり、「力を加え続けるため」と「後戻りを防ぐため」にマウスピースを1日20時間以上装着する必要があるのです。
マウスピースを外したままでは治療に影響ある?
では、マウスピースを外したままでいると、治療にどのような影響が出るのでしょうか。外していた期間ごとに解説します。
1日
1日だけ外したままなら治療に大きな影響はありません。
マウスピース矯正は、1週間かけて約0.25mm歯を動かすといわれています。1日つけ忘れたとしたら、0.03〜0.04mm程度、計画とズレが出てきます。
0.03〜0.04mmは非常に小さなズレであるため、1日装着し忘れた・外してしまっていただけであれば、ほとんど影響はありません。しかし、ほんの僅かでも計画にズレが起きたことになるので、治療を1日追加するとより安心です。
3日〜1週間以内
この期間ずっと外していた・忘れていた場合は、治療に大幅なズレが起きたり、せっかく動いた歯が後戻りがしてしまう可能性があります。
装着しても違和感や痛みがない場合はそのまま使用してもいいですが、痛みが強かったりうまく装着できない場合は、歯科医師の判断で新しくマウスピースを作製することもあります。
問題なく使えた場合でも、何日外してしまっていたか治療時に歯科医師に報告するようにしましょう。
1週間〜数ヶ月以上
この場合は、歯並びが変化しマウスピースが装着できない可能性が高いです。
すぐに歯科医師に相談し、装着し忘れた期間が長くなってしまった原因を話し合い、今後忘れないような対策を考えていきましょう。
マウスピース矯正の治療効果は、装着時間を守れているかによって大きな差が出るため、自己管理が非常に重要になってきます。
自己管理が難しいと感じた場合は、歯に固定するワイヤー矯正に変更するなど、歯科医師と矯正方法を検討することも視野に入れましょう。
マウスピースの装着時間が短くなった場合はどうなる?
1日だけマウスピースを外したくらいでは、そこまで大きな問題はありません。しかし、常習化してマウスピースを装着し忘れている場合はどうでしょう?
装着時間が減った場合に起こりうるリスクを解説していきます。
治療計画通りに進まなくなる
マウスピースの装着し忘れが常習化し、装着時間が治療計画より減ってしまうと、治療計画から大きく逸れてしまい、治療期間が延びる場合があります。
マウスピースを1日外してしまった程度であれば、治療計画を1日延ばすことでほとんどの場合、問題はありません。しかし、連続して頻繁にマウスピースを装着し忘れると、治療を数日延ばすだけでは対処できない可能性もあります。
マウスピースを装着していない期間が長いと後戻りが起き、装着していなかった日にち以上に治療計画とズレが出てしまいます。
ただでさえ治療期間が長い矯正治療が、自分の管理不足でさらに延びてしまうことになるため、毎日きちんとマウスピースを装着する習慣をつけるようにしましょう。
後戻りする可能性がある
装着忘れが1日だけでしたら後戻りはほとんどありませんが、マウスピースの装着時間が少ない日が続いたり、1週間近く装着していなかった場合は、後戻りが起きることがあります。
後戻りした状態でマウスピースを装着しようとすると、違和感や痛みが出たり、マウスピースがはまらないということもあります。この場合、矯正効果が得られない可能性があります。
マウスピースをはめて痛みがあったりはまらない場合は、なるべく早く歯科医師に相談するようにしましょう。
歯ぐきが下がる可能性がある
マウスピースの装着時間を守らないまま、治療計画通りに進めようとすると、歯ぐきが下がる「歯肉退縮」が起きてしまうことがあります。
歯肉退縮をすると、歯の根っこが露出してしまった状態になるため、歯が長くなったようになり見た目が悪く、知覚過敏が起きやすかったり、虫歯や歯周病のリスクが高まるため注意が必要です。
装着時間が短いことで歯が予定通りに動いていない状態のまま新しいアライナーに交換してしまうと、歯を無理やり動かすことになります。そのため歯に加わる力が強すぎて、歯茎もつられて無理に引っ張られ、歯肉退縮が起きてしまいます。
歯肉退縮は治療計画を修正すれば防ぐことができるため、外していることが多かったり装着時間が短い場合は、必ず歯科医師に相談しましょう。
マウスピースの装着し忘れを防ぐには?
マウスピース矯正を当初の計画通りに終わらせるためには、装着し忘れを防ぐことが非常に重要になってきます。マウスピースの装着忘れを防ぐ方法がいくつかあるのでご紹介します。
習慣化する
マウスピースの装着忘れを防ぐためには、マウスピースを装着することを習慣化することが大切です。
「〇〇をしたら△△をする」というようなルールを決めると忘れにくいです。
食事の際はマウスピースを外し、歯磨きをしたら装着すると思います。そのため、「歯を磨いたら、マウスピースをつける」というようなルールを決めておけば、忘れることなくマウスピースを装着できるでしょう。
1つ前のマウスピースを持ち歩く
マウスピースの装着し忘れや壊れた場合に備えて、外出する際は1つ前のマウスピースを持ち歩くようにしましょう。普段使用しているバックの中にマウスピースを常に入れておくことをおすすめします。
この時、マウスピースの衛生面と変形などを考え、必ずケースの中に入れて保管しましょう。
リマインド機能を活用する
スマートフォンなどのリマインド機能を活用することも効果があります。食事会などでマウスピースを外している時は、だいたいの終了時間にマウスピースを装着するリマインド通知や、アラームが鳴るように設定しておくと便利ですね。
同じように、忘れやすいマウスピースの交換時期も、リマインド設定しておくことがおすすめです。
メモを活用する
マウスピースの装着をついつい忘れてしまう状況は、人により様々だと思います。歯磨き後や飲み会の後、イベント後など、ご自身で忘れそうと思った時は目につくところにメモを貼ってみましょう。メモを貼ることで意識が向き、装着し忘れを防ぐことができますね。
まとめ
今回は、マウスピースを外したままではダメなのか、忘れた時の対策について解説しました。
1日程度忘れただけでは、ほとんど治療計画に問題ありません。しかし、装着していない期間が長くなるほど、マウスピースの形と歯並びがズレてしまい、痛みが出たりやマウスピースが入らないといったトラブルが起きやすくなります。数日でも装着し忘れてしまった場合は、すぐに歯科医師に相談しましょう。
マウスピース矯正は、患者様自身がマウスピースの装着時間を守れるかで治療効果が大きく変わってきます。
長い治療期間中に、「1日20時間以上装着」のルールを守り続けるのは非常に大変なことです。
ですが、きちんと装着時間を守って毎日続けていけば、確実に歯は移動し、理想の歯並びに近づいていきます。
治療期間が延長しないよう、自己管理を徹底していけるといいですね。