インプラント治療ってどうやるの?誰でもできる?

美しい歯並びと健康な歯は、自信と笑顔の源です。しかし、予期せぬ事故や加齢によって歯を失ってしまったら、あなたはどうしますか?

失った歯の補完方法として注目されているのが「インプラント治療」です。
近年では口腔外科を専門とする大病院だけではなく、一般的な歯科医院でも気軽にインプラント治療を受けることができるようになりました。

入れ歯や被せ物と比べると、まだ本格的に導入されてからの歴史が浅いインプラント治療。
「聞いたことはあるけどどうやるの?」「誰でもこの治療を受けることができるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、インプラント治療の仕組みや手順、治療が難しいとされる一般的な条件について詳しく解説していきます。

インプラント治療ってどうやるの?

まずはインプラント治療の仕組みや治療手順についてみていきましょう。

インプラント治療は、失った歯を補うための方法の1つです。人工の歯根である「インプラント」をあごの骨に埋め込み、その上に人工の歯を取り付けることで、天然の歯に近い安定感と見た目を実現します。

具体的な治療手順としては、まず歯ぐきを切開してあごの骨に穴を開け、そこにチタン製のインプラントを埋め込みます。チタンは人の身体に馴染みやすく、時間とともに周りの骨と結合し、しっかりと固定されます。
インプラントがあごの骨に定着したことを確認してから、仮歯を用いて歯ぐきや噛み合わせとの調和をとり、最後に本格的な人工歯を取り付けて治療が終了します。

インプラント治療のメリット

インプラント治療は、取り外し式の「入れ歯」や、両隣の歯を削って橋渡しのように歯を入れる「ブリッジ」と比べて安定感があり、周りの歯に負担をかけず、食事や会話などの日常生活を快適に過ごすことができます。

見た目も自分の歯のように自然で、手術の安全性も高く、定期的にメンテナスを施すことで長期間の使用が期待できます。

インプラント治療が難しい場合

多くのメリットがあり画期的な方法であるインプラント治療ですが、条件によっては治療が難しい場合があります。
下記で紹介する条件に当てはまっている場合、治療が可能かどうかを医師や歯科医師にしっかり確認しましょう。

1. 歯周病が進行している

歯科インプラントは、歯を失った部分の骨に人工の歯根を埋め込む治療法です。そのため、歯を支えているあごの骨の状態が非常に重要です。
歯周病は歯を支える組織に炎症が起こる病気であり、進行するとあごの骨を溶かしてしまう可能性があります。この結果、インプラントを埋めるための骨の量が足りず、治療が難しくなる場合があります。
また、歯周病が進行している状態でインプラントを埋め込むと、骨とインプラントが十分に結合せず、抜けてしまう場合もあります。

2. 年齢が適していない

インプラント治療を受ける年齢は、一般的には18~20歳以上が適しているとされています。
この頃にはあごの骨の成長が終了して歯並びが安定しているので「インプラントが合わなくなってしまった」などのトラブルを避けることができるためです。

高齢の方がインプラント治療を受ける場合、年齢の制限はありませんが体調面での注意が必要です。
例えば、免疫力が低下している場合はインプラントとあごの骨が結合しにくく、細菌感染のリスクも高まります。また、手術や通院が長期間に及ぶため、体力も必要です。
高齢の方の場合は、これらの要素を考慮しながら慎重に治療を行うことが大切になります。

3. 骨の量が足りない

インプラント治療が難しくなる要因として、あごの骨に十分な幅や高さがないことが挙げられます。あごの骨が不足していると、インプラントをしっかりと支えることができません。
骨が減少する原因には、先ほど述べた歯周病の他にも加齢や薬剤の影響などがあります。
骨の量や密度を増やす方法として、人工の材料を用いて骨を再生させる「骨造成」という処置を行うことも可能なため、担当の歯科医師に相談してみましょう。

4. 喫煙している

喫煙している場合、血流が悪くなることによってインプラントがあごの骨に上手く定着しないリスクがあります。
また、唾液が減少し口腔内細菌が増加することにより、歯周病にかかりやすくなります。歯周病がインプラントを支えている周囲組織にも広がると、インプラントが揺れたり、骨から外れたりする可能性があり、これを「インプラント周囲炎」といいます。
インプラント治療を検討しているのであれば禁煙することが望ましいでしょう。

5. 持病がある

インプラント治療は、歯ぐきを切開してあごの骨にインプラントを埋め込む外科手術が必要です。安全性の高い手術ではありますが、全身疾患がある方は身体に大きな負担をかける恐れがあり、病気のコントロール状態によってインプラント治療ができないと判断されることもあります。
インプラント治療が困難な全身疾患について、一般的なものを下記にご紹介します。

・糖尿病

糖尿病の方は、血液の循環が悪く傷の治癒が遅れやすいため、インプラント手術後に細菌感染や化膿のリスクが高まります。また、手術中に高血糖や低血糖が生じる場合もあります。
糖尿病がある場合は、主治医の治療方針に沿って通院し、血糖値をコントロールした状態でインプラント治療を検討しましょう。

・心臓病

心臓の病気で通院している、または過去に通院していた方は、細菌感染や発作が起こるリスクがあります。
心筋梗塞や狭心症の方、ペースメーカーを使用している方は特に注意が必要です。


・高血圧

高血圧にもかかわらず、主治医の指示通りに通院や薬の服用をしていない方は、治療中に脳出血や脳梗塞といった合併症を引き起こす可能性があります。
また、血圧が安定している場合でも、専用のモニターで観察しながらの手術が望ましいでしょう。

・貧血

貧血になると細胞内の酸素不足が生じ、骨との結合だけでなく治療箇所の回復も妨げられる可能性があります。さらに、免疫力が低下すると手術後の細菌感染のリスクが上がり、インプラント周囲炎が発生しやすくなります。

・骨粗鬆症

骨粗鬆症の治療として「ビスフォスフォネート系」の薬を使用しているか、以前に使用していた方は、抜歯やインプラントの外科手術を行うとあごの骨が壊死する可能性があります。
使用していた薬の種類や期間によってはインプラント治療が可能な場合もあるので、手術を行う前に歯科医師に申し出ましょう。

・癌治療中の方

放射線治療や化学療法を受けている方、受けた経験がある方は、骨が治りにくかったり免疫力が低下している可能性があり、インプラントがあごの骨に定着しない可能性があります。
主治医に相談し、お口の中の外科手術を行っても大丈夫かどうか確認しましょう。

まとめ

インプラントは自然な歯に限りなく近い見た目や噛み心地を手に入れられる方法であり、健康的な成人であれば安心して受けられる歯科治療です。
治療が難しいとされる場合も、歯周病の治療や骨を増やす処置を併用したり、持病をコントロールすることで成功率の高い手術を受けることができます。

食事を楽しみ、日々を快適に過ごせるよう、歯科医師やかかりつけの医師とよく相談した上で治療を検討してみてくださいね。

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