前歯だけ矯正したい!どんな方法がありますか?
前歯は口を開けた時に一番目立つため、隙間があいている、1本だけ傾いている、ガタガタしているなど、歯並びを気にされる方は多いでしょう。
「前歯だけでもきれいにならないかな」「前歯のこの部分だけ治ればいいのに」と悩んでいる方に向けて、今回は前歯だけを矯正をするメリットとデメリット、治療方法などについて解説していきます。
前歯だけ矯正をするメリット・デメリット
歯列矯正と聞くと、全体的に歯並びを治療するイメージをお持ちの方もいると思いますが、前歯だけなど気になる一部分を矯正できる部分矯正があります。
前歯だけの部分矯正にはメリットとデメリットがあるのでお伝えします。
メリット
全体を動かす全顎矯正と比べた時のメリットをお伝えします。
治療期間が短い
動かすのは前歯だけのため、全顎矯正と比べると治療期間が短くなります。動きやすさは歯の根っこの本数が関係しており、奥歯よりも前歯のほうが動きやすいと言われています。
全顎矯正の治療期間は一般的には約1〜3年かかりますが、部分矯正は歯の乱れの程度によって数ヶ月で終わることもあります。そのため、結婚式などのイベントを控えていて、目立つ前歯だけでも早く整えたいという方に適した矯正方法です。
費用が抑えられる
前歯の部分矯正は動かす歯の数が少ないため、全顎矯正よりも費用を抑えることができます。また治療期間も短いため、処置ごとに費用がかかる場合も抑えることができます。
治療中の痛みが少ない
矯正治療中、力が加わって歯が動く時や矯正装置が粘膜に当たることで痛みを感じます。繰り返しになりますが、部分矯正は動かす歯の本数が少なく移動距離も短いため、全顎矯正と比べて痛みは少ないと言われています。また、矯正装置をつける範囲も狭いため、装置が当たって粘膜が痛むということも少ないでしょう。
デメリット
次にデメリットについてお伝えします。
奥歯の歯並びと噛み合わせは変わらない
前歯の部分矯正のため、奥歯の歯並びと噛み合わせを変えることはできません。奥歯の歯並びや噛み合わせも改善したい場合は全顎矯正になります。また、ご自身では前歯の噛み合わせだけがおかしいと思っていても、全体を動かさないと改善が難しい場合もあるため、歯科医師からしっかりと説明を聞きましょう。
適応する歯並びが限られている
部分矯正できれいにできる歯並びは限られているため、希望したからと言って部分矯正で治療できるという訳ではありません。部分矯正では治療できない場合は、全顎矯正で治療する必要があります。
歯を削る場合がある
部分矯正が適応する歯並びでも、そのままの状態では歯をきれいに並べるスペースが不足していることがあります。その場合は、歯と歯の間を少し削って不足しているスペースを確保するIPRという処置を行います。
歯を削るといっても最大0.5mm程度とごくわずかで見た目に変化はほとんどなく、しみたり虫歯になりやすくなるといった報告もありません。しかし、健康な歯を削ることに抵抗がある方は、治療を始める前にIPRが必要な歯並びなのかどうか確認してみるといいでしょう。
前歯の部分矯正に適応する歯並びとは
先程、部分矯正できれいにできる歯並びは限られているとお伝えしましたが、どのような歯並びだと可能なのでしょう。一つずつ解説していきます。
軽度の叢生(そうせい)
叢生とは、歯が前後に重なり合ってガタガタしている歯並びのことです。犬歯が飛び出している八重歯も叢生になります。その中で、歯が多少重なり合っていたり、少しねじれている、少し傾いている程度の軽度なものであれば、部分矯正での対応が可能です。
空隙歯列(くうげきしれつ)
空隙歯列は歯と歯の間に隙間がある状態のことで、いわゆるすきっ歯のことです。前歯のどこかに隙間がある場合、隙間を埋めるように歯を動かしていくため、部分矯正で対応することができます。
軽度の上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の前歯が外側に飛び出ている状態、いわゆる出っ歯のことを上顎前突と言います。こちらも軽度なものであれば部分矯正で対応できますが、骨格に問題がない出っ歯のみになります。上顎の骨が小さかったり、上顎自体が前に出ていて出っ歯になっている場合、部分矯正での改善は難しいでしょう。
軽度の下顎前突(かがくぜんとつ)
下顎前突は、下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせのことで、いわゆる受け口のことです。こちらも軽度でしたら部分矯正で対応できますが、骨格に問題がある場合は部分矯正では改善することは難しいです。
矯正後の後戻り
矯正治療を終えてきれいに整った歯並びが、時間の経過と共に元の状態に戻ってしまうことを後戻りといいます。後戻りの場合は軽度なズレの場合が多いため、部分矯正での治療が可能です。
前歯の部分矯正の治療法
前歯の部分矯正にはどのような治療法があるのでしょうか。大きく分けて2つの治療法があります。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、ブラケットという装置を歯に装着し、そこにワイヤーを通して徐々に力をかけていく矯正方法です。ワイヤー矯正はセメントや針金で固定されてるため、自分で取り外しをすることはありません。
ワイヤー矯正は、歯の表面に装置をつける表側矯正と、裏面につける裏側矯正があります。表側矯正は口を開けると矯正装置が見えますが、見える分、比較的歯磨きがしやすい方法です。
裏側矯正は表側矯正に比べて装置が目立ちにくいですが、舌に当たって痛みを感じたり滑舌に影響が出たり、歯磨きがしにくく汚れが溜まりやすい場合があります。
また、ブラケットにもメタルブラケット、プラスチックブラケット、セラミックブラケットなど種類があります。ワイヤーもシルバーワイヤー、ゴールドワイヤー、ホワイトワイヤーがあります。
ワイヤー矯正=目立つというイメージがあるかもしれませんが、組み合わせによっては目立ちにくくワイヤー矯正をすることができます。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを新しいものに交換していく毎に少しずつ歯を動かす治療法です。
マウスピース矯正での部分矯正は、部分的だからといってマウスピースを一部分にはめるのではなく、お口全体を覆って必要な歯のみを動かしていきます。
マウスピース矯正は装置が透明で装着していても目立ちにくいため、矯正をしていることが周囲に知られたくない方にはおすすめの方法です。また、自分で取り外しができるため、食事や歯磨きは外せることもメリットでしょう。
マウスピースは1日20時間以上の装着が必要で、新しいマウスピースに交換するタイミングも自分で覚えておく必要があるため、自己管理能力が重要になってきます。
前歯の部分矯正の治療期間
全顎矯正の場合、治療期間は1~3年程度かかりますが、部分矯正ですと全顎矯正より短期間で終えることができます。
ワイヤー矯正による部分矯正は、表側矯正の場合は3ヶ月〜1年程度、裏側矯正の場合は6ヶ月〜1年程度と言われています。
マウスピースによる部分矯正は、3ヶ月〜1年程度になります。
前歯の部分矯正が短期間でできる理由は、前歯は根っこが1本しかないからです。歯の根っこが2~4本ある奥歯に比べて歯が動きやすく、部分的で動かす距離が狭いことが、治療期間を短くできる要因です。とくに、軽度の乱れた歯並びであれば、3ヶ月程度で治療が終えられるでしょう。
部分矯正以外の治療法はある?
実は前歯の歯並びをきれいにする方法は、部分矯正以外にもあります。それは「セラミック矯正」です。矯正という言葉はつきますが、ワイヤー矯正やマウスピース矯正のように歯を動かすのではなく、歯を削って表面にセラミックを貼り付けたり、被せ物をする治療法です。
歯を大きく削るデメリットはありますが、1〜2ヶ月という短期間で治療が終えられ、色味が豊富で艶のあるセラミックを入れるため、見た目はきれいに仕上がります。
数本だけ歯の角度や向きを変えたい、歯の大きさや色を変えたい場合は検討してみるのもよいでしょう。
まとめ
部分矯正であれば、前歯だけを矯正することができます。全顎矯正よりも痛みを抑えられ、治療期間を短くすることができるため、魅力的な矯正方法です。また、ワイヤー矯正とマウスピース矯正があるため、ご自身に合った方法を選択できます。
しかし、適応される歯並びが限られるというデメリットもあるため、前歯の部分矯正を検討されている方は、自分が適応する歯並びなのかどうか歯科医師に相談してみてください。
また、セラミック矯正もあるので、それぞれのメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、理想とする前歯の歯並びを手に入れてください。