マウスピース矯正にかかる期間はどのくらい?矯正を長引かせないためにできることも解説!
歯をゆっくりと移動させて歯列を整える矯正は、治療が終了するまでに長い時間がかかります。矯正治療を開始する前に、おおよその治療期間を知っておきたいと思う方も多いでしょう。
そこで今回は、マウスピース矯正にかかる期間はどのくらいなのか、治療期間を延ばさないためにできることはあるのかなどを解説します。
マウスピース矯正とは?
「マウスピース矯正」とは、透明なマウスピースを装着して歯を動かし、徐々に歯列を整えていく矯正方法のことです。1~2週間に1回程度の頻度でマウスピースを交換しながら、理想的な歯並びへと導きます。
矯正治療というと、一昔前は歯にワイヤーを装着して歯を動かす「ワイヤー矯正」が主流でしたが、近年ではマウスピース矯正を選択する方が増えてきています。これは、透明なマウスピースはワイヤーに比べると目立ちにくいこと、取り外しができるため口腔内を清潔に保ちやすいことなどが主な理由です。
マウスピース矯正にはいくつかの種類(メーカー)がありますが、現在当院を含む多くの歯科医院で導入されているのが、アメリカのアライン・テクノロジー社が開発した「インビザライン」というシステムです。メーカー独自の3Dシミュレーションソフトによって、歯の動きをシミュレートしながら治療計画を立てることが可能なので、さまざまな症例に対応できます。
マウスピース矯正にかかる期間
マウスピース矯正では、歯列全体を動かす「全体矯正(全顎矯正)」と、歯の一部だけを動かす「部分矯正」があり、それぞれで治療期間が大きく異なります。
また矯正治療では、実際に歯を動かす「動的矯正期間」と、歯の移動が完了したあとに歯の後戻りを予防する「保定期間」の二段階に分かれており、どちらも矯正治療を行ううえでとても大切な工程です。
ここでは、全体矯正と部分矯正に分けて、大まかな治療方法や治療期間について解説します。
全体矯正(全顎矯正)
全体矯正とは、奥歯を含めた全ての歯並びを矯正する方法のことで、見た目だけでなく、噛み合わせの不具合を改善することもできます。歯を並べるスペースを確保するために、抜歯を行うケースも少なくありません。
部分矯正と比べると費用は高くなりますが、多くの症例に対応することができるのが大きなメリットです。
症例にもよりますが、全体矯正の動的矯正期間は2~3年程度が一般的です。ほとんどの場合で保定期間は動的矯正期間と同程度になるため、動的矯正期間が2年なら保定期間も約2年となり、合計で4年かかることになります。
部分矯正
部分矯正とは、奥歯を除いた前歯などの一部分を対象とした矯正治療のことです。基本的に、笑ったときに見える歯(上下前歯6本ずつ、計12本程度)を整えます。すきっ歯、出っ歯、八重歯、軽度なガタつきなどを改善するために部分矯正を行う方が多いようです。
部分矯正の場合、動的矯正期間の平均は3~6ヶ月ほどで、長くても1年以内に終わることがほとんどです。ごく軽度なすきっ歯などは、1ヶ月で歯の移動が完了するケースもあります。
保定期間は全体矯正と同じく動的矯正期間と同程度で、動的矯正期間が6ヶ月の場合は保定期間も6ヶ月程度、合計で約1年です。
マウスピース矯正の期間が長引く原因
矯正治療中は日々刻々と口腔内の状況が変化するため、最初に立てた治療計画よりも矯正期間が長くなることがあります。マウスピース矯正の期間が長引いてしまう主な理由は、以下の通りです。
マウスピースを正しく装着できていない
マウスピース矯正を行う場合、基本的には1日20時間以上マウスピースを装着する必要があります。これは食事や歯磨き以外、寝ている間を含めたほぼすべての時間です。
マウスピースの装着時間が短いと、その分歯の移動が遅くなって計画通りに歯を動かすことができなくなり、結果的に矯正治療の期間そのものが長くなります。
また、マウスピースは正しく装着されてはじめて効果を発揮するため、しっかりとはまっていないまま使用するとうまく歯を動かすことができません。矯正治療をスタートした直後は意識してマウスピースを装着していても、慣れてくるとおざなりになってしまう方が少なくないため、マウスピースを装着する際はきちんとはまっているかを意識しするとよいでしょう。
アタッチメントの不具合
インビザラインによるマウスピース矯正では、歯の表面にアタッチメントと呼ばれる小さな突起を取り付けることがあります。アタッチメントの上からマウスピースを装着することによって、歯をより効果的に動かすことが可能です。
このアタッチメントが外れたりうまく装着できていなかったりすると、歯に適切な力がかからず治療がスムーズに進まなくなるケースがあるため、アタッチメントに不具合が出た場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。
虫歯や歯周病などの口腔内トラブルが発生した
矯正治療中に口腔内トラブルが発生すると、一度矯正治療を中断し、トラブルの治療を優先しなければいけません。
虫歯の場合、患部が小さければ長期的な影響はあまりありませんが、歯を削るなどして歯の形が変わってしまうとマウスピースを作り直す必要があるため、治療期間が大幅に延長する場合があります。
また、重度の歯周病で歯を支える骨が溶けてしまうと、場合によっては数か月単位で矯正治療を中断しなければならず、こちらも計画通りに治療を進めることは困難です。
途中で治療計画を変更することになった
治療を進めるうえで、当初想定していたよりも歯の動きが悪かったり、歯が想定外の動き方をしたりしたときは、追加でマウスピースを作る「リファインメント」を行う場合があります。
リファインメントは歯並びをしっかりと整えるために必要な工程ですが、マウスピースの数が追加されることで、その分治療期間は延びてしまいます。
歯が動きにくいタイプである
歯の動き方には個人差があり、歯並びや骨格、噛み合わせの状態などによって大きく変わります。当初の治療計画よりも治療が長引いている場合は、もしかしたら歯が動きにくいタイプなのかもしれません。
また、歯ぎしりや舌で歯を押すなどの癖があると、それがマウスピース矯正に悪影響を及ぼすおそれもあるため、治療の進み具合に疑問があれば、担当の歯科医師に相談をしてみるとよいでしょう。
矯正治療中に喫煙をしている
矯正治療は、歯を支える骨の吸収と再生を繰り返すことで歯を動かす仕組みです。矯正治療中に喫煙をすると、たばこに含まれているニコチンの影響で血流が悪くなって骨の再生が遅くなり、歯の動きが悪くなることがあります。
また、歯茎の血流が悪くなると歯周病のリスクも高まるため、矯正治療中の喫煙は避けたほうがよいでしょう。
マウスピース矯正の期間を長引かせないためにできること
矯正治療を行う場合、多くの方ができれば早く治療を終えたいと思うものですが、ご紹介したように矯正治療が長引いてしまう原因はたくさんあります。
治療が長引く原因の中には、ご自身の心がけや行動によって防止できるものもあるため、矯正治療中は以下の点に気を付けましょう。
- マウスピースの装着時間や装着方法をきちんと守る
- 口腔内を清潔に保ち、虫歯や歯周病に気を付ける
- 矯正治療中はなるべくたばこを吸わない
- マウスピースの交換時期を守る
- 決められた通院日をしっかりと守る
まとめ
マウスピース矯正の治療期間は個人差が大きいものの、多くの場合で年単位の時間がかかります。治療が長引くとマウスピースの管理や通院の手間が増えるどころか、受診費などの費用が追加で発生することも少なくありません。
治療を長引かせないためにも、矯正治療中はご紹介した注意点を意識してみてください。