矯正治療の気になるリスクと対策を解説
近年、大人になってから矯正治療を始められる方が増えています。
「子どもの頃に矯正しておけばよかった…」
「マスク生活がきっかけで歯並びが気になり始めた」
など、矯正治療を始める理由は患者様によって様々です。
しかし、「矯正治療って、体に悪い影響はないの…?」 「治療中に痛みが出たり、歯が抜けてしまったりしないか心配…」といった不安の声を耳にすることも少なくありません。
そこで今回は、矯正治療に伴うリスクとその対策について、分かりやすく解説していきます。
矯正治療中に起こりうるリスク
矯正治療は、歯に力をかけて少しずつ動かすことで、歯並びや噛み合わせを改善する治療法です。体に優しい力で行う治療とはいえ、全くリスクがないわけではありません。
ここでは、矯正治療で起こりうる次のリスクについて解説していきます。
- 歯根吸収
- 歯肉退縮
- 健康な歯を抜く可能性
- 虫歯・歯周病
- 歯の移動に伴う痛み
- 発音しづらくなる
- 口内炎
- 金属アレルギー
- 顎関節症
それぞれ詳しく見ていきましょう。
歯根吸収
歯根吸収とは、歯の根っこが溶けて短くなってしまうことです。矯正治療で歯を動かす際に歯根に過度な力が加わると、まれに起こることがあります。
歯根が短くなると、歯がぐらついたり、最悪の場合は抜けてしまう可能性もあります。
歯肉退縮
歯肉退縮とは、歯茎が下がって歯の根元が露出してしまう状態をいいます。歯周病や加齢、歯ぎしり、ブラッシング圧などが原因で起こりますが、矯正治療によって歯が移動することで歯茎が引っ張られ、一時的に歯肉退縮が起こる場合があります。
歯茎が下がると知覚過敏や歯根の虫歯になりやすくなることがありますが、歯科医院に相談すればすぐに対処が可能です。
健康な歯を抜く可能性
歯を並べる顎の大きさと生えている歯の大きさのバランスが悪い場合は、抜歯が必要となる場合があります。もちろん、抜歯が必要な場合は抜いても問題のない歯や状態の良くない歯を対象として選ぶなど、治療後の状態を考えた上で行います。
虫歯・歯周病
矯正装置を装着すると歯磨きがしにくくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。装置の周りや歯と歯の間などに食べ物が詰まりやすく、歯垢(プラーク)が溜まりやすくなるためです。
これらのリスクを避けるために、矯正治療中は定期的な検診と丁寧なホームケアが重要になります。歯科医院のクリーニングと併せ、自宅での歯磨きでは歯間ブラシやデンタルフロスを併用して丁寧に磨きましょう。
歯の移動に伴う痛み
矯正治療中は歯を動かす力によって、歯が浮いたような感覚や痛みを感じることがあります。特に装置を調整した直後は数日間痛みが出る場合がありますが、通常は市販の鎮痛剤でコントロールできる程度です。
痛みが強く、我慢できない場合はすぐに歯科医院へ相談しましょう。
発音しづらくなる
矯正装置を装着すると舌の動きが制限されるため、発音しづらくなることがあります。特に、歯の裏側に装置を付ける舌側矯正では、発音への影響が出やすい傾向があります。
時間と共に慣れてくることが多いですが、仕事などの影響が心配な方は事前に歯科医師とよく相談してから治療方法を検討しましょう。
口内炎
矯正装置を装着すると、唇や頬の内側に当たって口内炎ができることがあります。特に歯の表面にブラケットを装着するワイヤー矯正は、器具が口の中の粘膜にあたって傷つき、口内炎ができやすいといった特徴があります。
アレルギー
ワイヤー矯正のような金属製の矯正装置を使用した場合、金属アレルギー反応が起こることがあります。金属アレルギーの既往がある場合は、事前に歯科医師に相談しましょう。
歯科医院によっては、非金属のセラミックやプラスチック製の装置を用意している場合があります。
顎関節症
矯正治療によって噛み合わせが変化することで、顎関節症が悪化したり、新たに発症したりする可能性があります。これらは多くの場合一時的なもので、噛み合わせが正常になるにつれて徐々に症状が落ち着きます。
患者様によって起こりうるリスク
矯正治療は患者様の状態によって治療内容が変わるため、個々によって抱えるリスクも異なります。ここでは患者様によって起こりうるリスクについて解説します。
補綴物の再治療
矯正治療を開始したことで、過去に治療した詰め物や被せ物を再治療する場合があります。矯正治療によって噛み合わせが変わることで、補綴物が破損したり、顎の痛みが発生する可能性があるからです。
クーリングオフができない
矯正治療は、専門的な知識と技術を持った歯科医師による判断に基づいた医療行為であるため、クーリングオフの対象になりません。そのため、契約をした後の患者様都合によるキャンセルの場合は、キャンセル料が発生する可能性があります。
転院による治療の継続
矯正治療は各歯科医院によって治療方針や内容が異なるため、引越しや転勤など患者様の都合によって転院される場合、治療をそのままの条件で継続することが難しい場合があります。
また、転院した場合、新たな歯科医院と再び矯正治療の契約を結ぶことになるため、金銭的な負担も避けられない可能性があります。矯正治療を開始する際はこうした可能性を含めてライフプランを考慮し、その上で治療を受けるかどうか検討しましょう。
矯正治療のリスクを最小限にするための対策
矯正治療に伴うリスクを最小限に抑え、安全に治療を進めるためには、以下の点に注意することが大切です。
- 経験豊富な歯科医師を選ぶ
- ライフプランを考慮して治療を受ける
- 治療中は歯科医師の指示を守る
- 口腔ケアを徹底する
- 異常を感じたらすぐに相談する
経験豊富な歯科医師を選ぶ
矯正治療は専門的な知識と技術が求められる医療行為です。矯正治療を受ける際は実績と経験が豊富な歯科医師が在籍しているかを確認し、歯科医院を選びましょう。
ライフプランを考慮して治療を受ける
歯列矯正は長期間を要する治療であり、治療期間中は定期的な通院が必要です。前述のとおり転院する場合はリスクが伴います。
また、女性の方で治療期間中に妊娠・出産などがあると、定期的な通院が難しくなり、治療を中断せざるをえない可能性があります。その場合は後戻りなどが発生し、治療期間が長引く可能性があるので、治療を受ける際は数年後まで十分に計画を立てておきましょう。
治療中は歯科医師の指示を守る
矯正治療を成功させるためには、歯科医師の指示をきちんと守ることが重要です。特にマウスピース矯正では、決められた装着時間を守らないと歯が計画通りに動かず、治療期間が長引く可能性があります。
また、治療中は定期的に治療の進行具合をチェックする必要があるため、通院は歯科医師の指示に従って予定通り行いましょう。
口腔ケアを徹底する
前述のとおり、矯正装置を装着すると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
歯科医院の定期的なクリーニングと併せ、丁寧なホームケアも欠かさず行いましょう。
食事の後はなるべく歯を磨き、1日に1回は歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシも併用して隅々まで清潔に保つようにしましょう。
異常を感じたらすぐに相談する
矯正治療中に異常や違和感を感じた場合は、すぐに歯科医院へ相談しましょう。違和感や少しの痛みであれば一時的なものである場合がほとんどですが、まれに重度のトラブルに発展するケースもあります。
些細なことでもすぐに相談することで、治療がスムーズに進みます。
矯正治療はリスクと対策を理解した上で始めましょう
いかがでしたか。今回は、矯正治療に伴うリスクについて解説しました。
矯正治療にはいくつかのリスクが伴いますが、適切な対策を行うことで、ほとんどのリスクは回避することができます。
矯正治療を検討されている方は、リスクについて正しく理解し、信頼できる歯科医師と相談しながら治療を進めていきましょう。