歯列矯正に必要な期間とは?治療を早く終わらせるためのポイントを解説
歯列矯正には「歯並びを美しく整える」「噛み合わせを改善する」といったメリットがあります。しかしその反面で、長い期間がかかるのではないかと、不安に感じる人も多いでしょう。
そこで今回は、歯列矯正に必要な期間と治療を早く終わらせるためのポイントを、3つ解説します。期間がネックになってしまい、矯正治療になかなか踏み出せない人は必見です。
歯列矯正の基本的な仕組み
まずは、歯列矯正でどのような変化を得られるのか、基本的な仕組みからみていきましょう。
人間の歯には「歯槽骨(しそうこつ)」と呼ばれる根元を支えるための骨と、歯の根っこ本体と歯槽骨をつなげる、繊維性の膜「歯槽骨(しこんまく)」があります。どちらも正常な歯を保つために必要不可欠な存在ですが、力を加えることによって、次のような現象を引き起こします。
- ・力がかかる方向に歯根膜が伸縮する
・歯根膜を正常な厚みにするための反応が起きる
・歯槽骨の代謝(再生・破壊)によって歯が動く
つまり、矯正器具を装着したことで弱い力が歯根膜に加わると、骨代謝を行う細胞の働きで、徐々に歯を動かすことができるのです。このメカニズムによって、歯列矯正による「美しい歯並び」や「噛み合わせの改善」が実現します。
歯列矯正に必要な期間目安
歯列矯正に必要な期間は、歯を動かす距離と今現在の歯の状態で変わります。
ではさっそく、以下で詳しくみていきましょう。
◇歯列矯正にかかる期間目安
歯列矯正にかかる期間目安は、部分矯正の場合6~10ヶ月、全部矯正の場合は1年半程度です。
実際にどのくらい期間が必要なのかは、歯を動かす距離によって変わります。距離が短ければ早く治療が終わりますし、距離が長ければその分時間がかかります。
さらに、歯列矯正に必要な期間は、現在の歯の状態が大きく関係することも、忘れてはいけません。
「虫歯がある」「歯周病が進行している」このような状態では、矯正器具をつける前に治療が必要です。反対に、定期的な検診で歯のメンテナンスを行っている人や、歯並びが比較的整っている人は、数ヶ月で矯正治療が完了するケースもあります。
歯列矯正に時間がかかるのはなぜか
歯列矯正は、短期間で完結する治療ではありません。先述したとおり、年単位の期間が必要です。なぜこんなにも時間がかかってしまうのか、不思議に思われる人もいるでしょう。
歯列矯正に時間がかかってしまう理由は、歯を動かすための「矯正期間」と、動かした歯を固定させるために必要な「保定期間」の、2つが必要だからです。
歯列矯正で歯を動かすことに成功しても、そのまま放置してしまえば、必ず「後戻り」を引き起こします。元の状態に戻ろうとする力が強く働くことで、歯を動かしてしまうからです。
このような働きを阻止するためには、保定に必要な「リテーナー」という装置を使って、しっかりと固定させなければいけません。この期間も含めると、歯列矯正には年単位の長い期間が必要です。
歯列矯正の代表的な種類とメリット・デメリット
歯列矯正には、次の3つの代表的な種類が存在します。
- ・ワイヤー矯正(ブラケット矯正)
・裏側矯正
・マウスピース矯正
では、それぞれの特徴とメリット・デメリットについてみていきましょう。
◇ワイヤー矯正(ブラケット矯正)
ワイヤー矯正は、ブラケット矯正とも呼ばれていて、唇の裏側に位置する歯の表面に矯正装置「ブラケット」を取りつけます。これをワイヤーで固定していくのですが、適用範囲が幅広いため、あらゆる症例に対応できるのが特徴的です。
- 【メリット】
・歯並びが悪い人でも治療効果を期待できる
・目立ちにくい素材(白や透明)を選べる
・取り外す手間が不要
- 【デメリット】
・金属製の素材を選ぶと目立つ
・ほっぺた部分に口内炎ができやすい
・金属部分が口にあたって痛みが出るケースもある
なお、ワイヤー矯正(ブラケット矯正)を開始すると、人によっては食事の際に痛みを感じることもありますが、2週間前後で緩和されるケースが多いです。
◇裏側矯正(舌側矯正)
裏側矯正(舌側矯正)は、前述した歯の表面にブラケットを装置する方法とは反対に、裏側(舌側)部分を使います。笑った際に矯正器具が目立たないため、若い女性からも人気です。
しかしながら、歯の裏側は表面よりも構造が複雑なので、ブラケットを設置する医師は高い技術を要求されます。価格の面でも高くなることを覚えておいてください。
- 【メリット】
・矯正器具が目立たない
・唇に傷がつきにくい
・取り外す手間が不要
- 【デメリット】
・医師の高い技術が要求されるため費用が高い
・歯の表面の矯正よりも適用範囲が狭い
・慣れるまでは発音しづらい
矯正器具を目立たせたくない人に最適ですが、適用範囲の関係上、歯の状態によっては設置が難しいケースもあるでしょう。
◇マウスピース矯正
マウスピース矯正は、3種類の中で一番手軽な治療法です。歯の精密検査を行ってから、自分専用のマウスピースを作成します。
取り外しが可能となっているため、非常に衛生的です。歯の健康が気になる人におすすめですが、定められた装着時間を厳守しないと、矯正に必要な期間が長くなってしまいます。
- 【メリット】
・取り外しできるから歯ブラシがやりやすい
・色が透明で目立ちにくい
・金属アレルギーの人でも装着できる
- 【デメリット】
・適用範囲が狭い
・マウスピースのお手入れが必要
・装着時間をしっかりと管理する必要がある
抜糸が必要となるケースに、マウスピースの歯列矯正は適しません。歯並びや状態によって、マウスピースの適応が左右されることを把握しておきましょう。
歯列矯正は顔の印象が変化することも
歯列矯正によって歯が本来の位置に戻れば、人によってはフェイスラインがすっきりと調います。もちろん、得られる変化には個人差がありますが、なかには小顔になったと感じる人もいるでしょう。
また、歯列矯正で顔の印象に変化が現れる理由は、単純に歯並びが整うからだけではなく、噛み合わせに改善効果を期待できるからです。
噛み合わせが悪い状態を長く放置すると、自分でも気がつかないあいだに顔の筋肉が歪んでしまう可能性も。歯列矯正によって噛み合わせが良くなれば、筋肉の歪みは徐々に改善されて「輪郭が整う」「左右のバランスが良くなる」といった、嬉しい変化を実感できるケースもあります。
歯列矯正にかかるトータル費用目安
歯列矯正は、健康保険が適応外です。自由診療となるため、費用は全額自己負担となります。歯列矯正にかかるトータル費用が気になる人は、以下の目安を参考にしてみてください。
- ・表側ワイヤー矯正(奥歯含む全体):60〜100万円
・裏側(舌側)矯正(奥歯含む全体):100〜150万円
・マウスピース矯正(奥歯含む全体):80〜100万円
なお、上記の費用は一般的な矯正装置を活用した場合です。審美性に優れた素材では、金額が変わってきます。
歯列矯正にかかる期間を短縮させる3つのポイント
歯列矯正の期間は、歯の状態だけで左右されるものではありません。治療期間をどのように過ごすかで、大きく変わってきます。
少しでも早く歯列矯正から卒業するためには、以下の3つのポイントに注意してください。
◇装着時間を必ず厳守する
ブラケットを設置する矯正は、自分で取り外しができません。一方、マウスピースを使った矯正は自分自身で取り外しが可能です。「デンタルケアがしやすい」「食事がしやすい」といったメリットがある反面、気の緩みから装着時間が短くなる恐れもあります。
- ・外した後は装着する癖をつける
・家族に声掛けをしてもらう
このような工夫で、一日20時間以上はマウスピースを装着できるようにしましょう。定められた装着時間を厳守することで、歯列矯正にかかる時間を長引かせずに済みます。
◇矯正治療に必要な通院を計画通り進める
歯列矯正は、定期的な通院が必要です。仕事やプライベートが忙しくて予約を先延ばしにしてしまうケースもありますが、これだと期間を長引かせてしまう可能性も。
このような事態を避けるためには、通院を計画通り進めるようにしてください。「体調が悪い」「やむを得ない急用が入った」といったケース以外は、キャンセルせずに通えるようにしましょう。
◇毎日の歯ブラシケアを徹底する
ブラケットを装置するワイヤー矯正は、通常よりも歯ブラシがしにくいです。時間と手間をかけて丁寧にケアをしないと、虫歯や歯周病が発生してしまい、治療を優先しなければいけなくなる場合があります。
また、このようなトラブルが発生することで、矯正装置が緩んでしまうケースも少なくありません。矯正器具の効果を最大限活用するためにも、毎日の歯ブラシケアを徹底するようにしてください。
まとめ
歯列矯正に必要な期間は、1〜3年が平均的です。「歯の状態」「装置後の状態」によって前後しますが、歯を動かす期間と固定する期間の両方が必要となるため、短期間で完了させるのは困難です。
しかしながら、今回ご紹介した以下の3つのポイントによって、歯列矯正を長引かせずに早く終わらせることができます。
- ・1日の装着時間を必ず守る(マウスピースの場合)
・歯列矯正に必要な通院を先延ばしにしない
・歯のトラブルを避けるためのケアを徹底する
なお、歯列治療は日々進化しています。あらゆる工夫によって、従来よりも期間をかけずに高い治療効果を得られるようになりました。歯並びや噛み合わせにお悩みの人は、気軽な気持ちで専門医に相談してみましょう。