顎関節症でも矯正治療はできる?
歯並びが気になるので歯列矯正をしたいけれど、それ以前に自分は顎関節症だと認められている(診断されている・治療中である)。
このような場合に、歯列矯正は可能なのでしょうか。
そもそも、顎関節症とはどういった状態なのでしょうか。
顎関節症と歯列矯正、両者への知識を深めていきましょう。
顎関節症とは
顎を動かすと音がする・違和感がある。こうした症状の方もいらっしゃるでしょう。時には顎の痛みから頭痛に悩まされる方もいます。
顎関節症は、以下の3つの症状が認められた場合をさします。
- 顎が痛む
- 口が大きく開けられない
- 顎を動かすと音がする
それでは、なぜ顎関節症になってしまうのでしょうか。
顎関節症の原因は、複数の要因が重なるものだといわれます。その要因となるものを解説していきましょう。
噛み合わせの悪さ
「噛み合わせの悪さ」は顎関節症の要因のひとつといえます。噛み合わせが悪いと咀嚼にも影響が出てしまい、顎関節症を引き起こすともいわれています。
ただし、前述したように顎関節症は複数の要因が重なって起こるといわれます。ですから、噛み合わせの悪さも顎関節症の「要因のひとつ」ですが全てではありません。そのため、噛み合わせを治せば顎関節症が治るともいえないのです。
ブラキシズム
- くいしばり
- 歯ぎしり
- 歯をカチカチ鳴らす
ブラキシズムがひどくなると、歯が突然ひび割れたり、場合によっては折れてしまうこともあります。顎関節症を引き起こす要因の中でもやっかいなものです。
ストレスや悪い生活習慣
前述のブラキシズムに関係しますが、なぜ食いしばりや歯ぎしりを起こすのでしょうか。ブラキシズムを起こさなければ、顎関節症のリスクも減り健康な口内や口周りの状態が保てるでしょう。
ブラキシズムは、筋肉の緊張によって起こります。
人は学校や職場での人間関係でストレスを抱えやすいものです。そして、ストレスを抱えるということは体が緊張状態にあるということです。
つまり、顎関節症を起こしやすいのです。
また、生活習慣の中で顎や筋肉に負担をかける癖も気を付けたいものです。ストレスからくるくいしばりが習慣化してしまうこともあるでしょう。
よくあるのが、咀嚼を左右のどちらかだけで偏った噛み方をして顎や筋肉に負担をかける行為です。「偏咀嚼」といわれます。
寝る時の姿勢もそうです。いつも右側(左側)だけを向いて寝ていると、寝ている間中、顎に偏った負担がかかります。
偏った筋肉の緊張は、姿勢の悪さ、頬杖をつくことでも起こります。
日常の何気ない仕草とも感じますよね。
ですが、知らず知らずのうちに体を緊張させないように、リラックスした気持ち、そして偏った生活習慣を見直していきましょう。
このように、顎関節症を引き起こす要因は生活の中で身近にあふれています。
慣れないパソコンを必死で覚えようとして歯をくいしばっているといったこともあるかもしれません。
職場の冷房が効きすぎて歯をカチカチ鳴らし、体は背を丸めてしまっているかもしれません。日常の何気ないストレスから身を守っていきましょう。
顎関節症は心配し過ぎずに
日常生活の癖やストレスから顎関節症も起こり得る話をしましたが、「顎関節症ではないか」「病気だ!すぐに治療が必要だ!」といったように神経質になる必要はありません。
先に痛みがあった場合でも、徐々に痛みを感じなくなる場合もあります。
日常生活に不都合を感じる場合には、歯科医院で適切な施術を受けるぐらいの気持ちで大丈夫なのです。
また、無自覚でも顎関節症になっている(顎関節症の症状に値する)場合も多いものです。前述したように、顎関節症は自然と、あるいは徐々に痛みや違和感が消えていくことも多いので心配し過ぎずにいましょう。
歯列矯正と顎関節症治療は同時に行える
顎関節症について理解を深めていただけたことでしょう。
今回の記事の本題である「顎関節症でも歯列矯正ができるか」という疑問に戻ると、大前提として歯列矯正の治療判断の前に、歯科医院では口内の検査だけではなくお口周りの顎の状態などもみていきます。
ということは、そこで顎関節症だと判断される場合もあります。そして、顎関節症の原因が噛み合わせの問題だとなれば、歯列矯正を行う必要があります。歯科医師ごとに判断は異なると思われますが、患者さんの痛みや違和感、お口の健康を考えたうえで治療の提案をしてくれます。
また、歯列矯正の治療中に顎関節症になる場合もあります。
その際は「スプリント」と呼ばれるマウスピースを就寝時に装着して緊張度を軽減させます。消炎鎮痛剤の服用も効果的といわれています。
顎関節症の原因や対処法によって、歯列矯正への対応も決まるといえるでしょう。
歯列の状態も、顎の状態も、総じて違和感があれば歯科医院へ相談して治療の手順を決めていくことをおすすめします。
以下に、歯列矯正治療前に顎関節症の症状がある代表的な例をご紹介します。
骨格性開咬
「開咬(かいこう)」はオープンバイトとも呼ばれます。奥歯を噛みしめても前歯が当たらない状態です。
前歯で食べ物が噛み切れない、という自覚症状があれば疑ってみましょう。
噛みあう歯が少なくなる分、顎関節にかかる力が増えるので、顎関節症のリスクも高まってしまう状態です。
片側性交叉咬合
「へんそくせいこうさこうごう」といいます。
上の歯が下の歯に被さるのが正常な歯並びですが、歯並びの途中で交叉してしまっている状態を交叉咬合といいます。
交叉咬合では、上の奥歯が下の奥歯の内側に入ってしまっている状態です。
片側性は、いつも同じ方向で頬杖をついたり、物を噛んだりすることで、顎関節にかかる力のアンバランスさで起こります。関節の位置が非常にずれやすい状態になるため、上記のような歯並びの状態を起こしてしまいます。
また、見た目にコンプレックスを抱く方が多く、歯列矯正を積極的に行う症状でもあります。
歯列矯正をしながら、日常での生活も見直していく必要があります。そうすれば、矯正が終わった後も、きれいな歯並びを維持していけるでしょう。
このように、一般的に歯列矯正が必要となる症例も、原因が顎関節症である場合や、相関関係が考えられるケースも多くあります。
歯科医師のアドバイスを受けながら、お口の状態を良くしていきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
顎関節症でも矯正ができるのか?という疑問から、顎関節症を知ると、そもそも歯列の問題であったり、日常生活の癖であったりと、新たな発見もあったのではないでしょうか。
お口の健康は歯磨きだけではなく、日常生活の中にもコツがあることを解説してきました。今すぐ改善できそう・した方が良いこともあったと思います。
矯正と顎関節症はどちらが先という問題でもなく、互いに関わりあった症状が多いものです。歯科医師のアドバイスを頼りに、患者さんご自身も納得のいく治療を受けていただきたいと考えています。
今後も矯正治療に関する情報を発信していきますので、ぜひ他の記事もご覧ください。
最良の治療選びのお役に立てましたら幸いです。