インプラント治療を中断してしまった!そのリスクや再開方法について解説
インプラント治療は、失った歯を再現するための画期的な方法です。しかし、治療途中で中断せざるを得ない状況に陥ることもあります。
そんなときに重要なのが、中断に伴うリスクや再開方法についてよく理解しておくことです。
今回のコラムでは、インプラント治療の中断によって生じるリスクや、中断後の再開に必要なプロセスに焦点を当て、わかりやすく解説していきます。
インプラント治療の仕組み
まずはインプラント治療について、その仕組みや治療の流れをおさらいしましょう。
インプラント治療にはさまざまな手法がありますが、ここでは一般的な方法について紹介していきます。
インプラント治療は、人工の歯根「インプラント」をあごの骨に埋め、失われた歯を再現する治療法です。
手術前に綿密な治療計画を立てるため、最初にCT撮影を行ってあごの骨の状態を診断し、シミュレーションソフトを使用して、インプラントの埋入位置や角度を決定します。
手術当日は、歯ぐきを切開し、あごの骨に小さな穴を開け、そこに人工の歯根である「インプラント」を埋め込みます。
数ヶ月後、インプラントが骨としっかり結合したら、その上に仮歯を装着します。
仮歯で問題なく噛めることを確認した後、最終的な人工歯を取り付けて、治療終了となります。
インプラント治療を中断する理由
自分の歯のように噛めて、見た目も美しいインプラント治療は素晴らしいものですが、治療を最後まで受けられない方には、一体どのような理由があるのでしょうか?
インプラント治療のデメリットとして、治療期間が比較的長いということが挙げられます。
手術前の検査や、手術の日程が決まるまでの期間、手術後にインプラントが骨と定着するまでの期間、仮歯の期間などを全て含めると、治療が順調に進んだ場合でも3ヶ月〜半年ほどかかります。
そのため、「転居により通院が困難になった」など、物理的な理由で治療を中断してしまう方がいます。
また、女性の妊娠や、学生の受験など、生活スタイルの変化が治療中断の原因になることもしばしばあります。
また、よく聞かれるのが「仮歯が入って落ち着いてしまった」というものです。
インプラントの仮歯はとても精巧に作られており、見た目や噛み心地も自分の歯とほとんど変わりません。
そのため、仮歯が入った時点で安心してしまい、通院を辞めてしまう場合があるのです。
インプラント治療を中断するリスク
どのような治療でも、その中断はあまり好ましいものではありません。特に、インプラント治療は費用の負担が大きく、外科的な処置が伴うため、治療を中断した際のリスクや後悔は比較的大きくなる傾向があります。
中断する時期によってさまざまな問題が生じるため、1つずつ見ていきましょう。
1.最終的な人工歯を入れるスペースが無くなる
インプラント埋入手術後、仮歯を入れる前に治療を中断すると、インプラント予定部位の周りの歯が傾いたりずれたりしてきます。そのため、歯の配置が変わり、最終的な人工歯が入らなくなるリスクがあります。
また、仮歯を入れていたとしても、そのすり減りや劣化により噛み合わせの高さなどが変化する可能性があります。
その場合、当初に予定していたものとは違う形の人工歯を入れることになり、インプラントの寿命にも影響を及ぼします。
2.仮歯が壊れる・外れる
インプラントの仮歯は、ある程度まで噛む機能を回復できますが、その効果は一時的なものです。
仮歯はプラスチック製であり、セラミックなどを使用した最終的な人工歯と比較すると耐久性が低く、長期使用によって破損したり、外れたりすることがあります。
治療を中断せずに最終的な人工歯を装着するほうが、より長期間にわたって快適に使用できるメリットがあります。
3.インプラントが抜ける
仮歯のまま治療を中断した場合、仮歯が壊れたり外れたりするだけでなく、インプラント自体に過剰な負荷がかかることで抜けてしまう可能性があります。
抜けたインプラントは、自分で勝手に戻しても元通りにはなりません。自己判断はせず、歯科医院で診察を受けるようにしましょう。
4.細菌感染のリスクが高まる
インプラントは虫歯にはなりませんが、インプラントを支える組織が細菌感染して炎症が起こる「インプラント周囲炎」になる可能性があります。
これは、インプラントを仮歯のまま放置したり、最終的な人工歯を入れた後に適切なメンテナンスを継続しなかったときに起こります。
インプラント周囲炎が進行すると、炎症による痛みや腫れに悩まされるだけでなく、インプラントが揺れたり抜けてしまうことにもつながるため、注意が必要です。
インプラント治療を再開するには?
やむを得ずインプラント治療を中断し、その後再開させたいという場合は、まず治療を受けていた歯科医院で相談しましょう。
もともと通っていた歯科医院であれば、インプラントの治療計画を把握しているため、治療をスムーズに再開させることができる可能性が高まります。
遠方に転居したなどの理由で通院が難しい場合は、治療を受けた歯科医院に一度相談してください。治療を引き継いでくれる歯科医院宛に、紹介状を書いてもらえる場合があります。
インプラントにはさまざまなメーカーや種類があり、それによって治療方法や使用する器具が異なるため、どのインプラントを使用したかがわからないと治療を再開させることが難しくなります。インプラントの情報を転院先に正確に伝えるためには、紹介状が必要です。
紹介状がなくても診察自体は可能ですが、紹介状がある場合と比べ、治療再開には時間と費用がかかることを覚えておきましょう。
インプラントを中断しないためには?
インプラント治療の中断は、お口の中を健康に保ち、余計な費用や治療期間をかけないためにも、極力避ける必要があります。そこで、インプラントを始める前に以下の項目についてよく検討しましょう。
1.開始のタイミングを検討する
インプラント治療をスタートさせる前に、まず自身のライフスタイルや将来の計画をよく考えてみましょう。
インプラント治療は比較的時間がかかります。治療と日常生活の両立が可能か、大きなライフイベントが控えていないか、慎重に確認することが大切です。
インプラント治療の期間は個人差があるため、まずは検査を受けて治療期間の目安を確認し、その上で治療を開始する時期を検討しましょう。
2.目標をはっきりさせる
治療を始める前に、なぜインプラント治療が必要なのか、どのような効果を求めているのかを具体的にイメージしましょう。
例えば「食事を楽しめるようになりたい」、「見た目を美しく改善したい」など、治療の目的を理解し、それに対するモチベーションを高めることで、治療を継続しやすくなります。
3.歯科医師と円滑なコミュニケーションをとる
インプラント治療の進み具合や不安な点を確認するためには、歯科医師やスタッフとの円滑なコミュニケーションが重要です。
そこで、治療を始める前に十分なコミュニケーションを取り、スムーズなやりとりができるかどうかを確認すると良いでしょう。
歯科医院との良好な関係性が、治療継続のモチベーションにつながります。
おわりに
いかがでしたか?
インプラント治療を中断すると、さまざまな悪影響が生じる可能性があります。引っ越しや体調不良、仕事や家庭の都合などで中断せざるを得ない場合は、まずかかりつけの歯科医院に相談することが重要です。
もし、何らかの理由で現在の歯科クリニックに通うことが難しくなった場合でも、歯や口の中の健康を維持するため、他の歯科医院での治療継続を検討してみてください。
転院するときは、紹介状を持参すると治療の引き継ぎがスムーズになることもぜひ覚えておいてくださいね。