どうして歯列矯正は保険適用外なの?

歯並びや噛み合わせが気になる時に思い浮かべるのは歯列矯正でしょう。

そして、歯列矯正を考える上で気になるのが矯正方法や治療期間、矯正費用だと思います。

歯列矯正の費用は高額なため、少しでも保険を使って費用を抑えたいところですが、基本的に自由診療のため、健康保険は適用外となります。

「虫歯や歯周病の治療は保険適用なのに、なぜ歯列矯正は保険適用外なの?」と疑問に思う方のために、今回はなぜ歯列矯正は保険適用外なのかについて解説します。

日本の医療保険制度について

歯列矯正がなぜ保険適用外かというと、それには日本の保険制度が関わってきます。簡単に保険制度について説明します。

現在の日本は、全ての人が公的医療保険に加入し、全員が保険料を支払うことで、お互いの医療費負担を支え軽減し合う「国民皆保険制度」を実施しています。

1955年頃までの日本は、国民の約1/3に当たる3000万人が無保険者で社会問題となっていたそうです。そこで、1958年に国民健康保険法を制定し、3年後に全国の市町村で国民健康保険事業を開始し、「誰でも」「どこでも」「いつでも」保険医療を受けられる現在の体制が確立しました。

そして、納めている健康保険料の使用先は、医療費の支払いや健康の保持・増進のための保険事業、高齢者の医療費を支えるための拠出金などです。これにより、病院にかかった時の窓口負担は、かかった医療費の3割で済み、残りの7割を国やみなさんと事業主が納める健康保険料から賄っています。

これが現在の日本の医療保険制度です。

歯科治療で保険適用されるもの

公的な医療保険が適用となるものは、治療対象が「病気」であることが条件です。

そのため保険適用されるおもな歯科治療は、

・虫歯治療(歯を削る、詰め物・被せ物・入れ歯の製作)
・歯周病治療(歯石除去、クリーニング)
・知覚過敏処置

となります。

また、病気かどうかを診断するためのレントゲン撮影も保険適用となります。

医療費の財源には限りがあるため、これら以外は保険適用外となります。
つまり、病気や緊急性の高い治療に医療費は使われるため、予防接種などの予防医療や、見た目の改善が目的の美容医療には公的医療保険が適用されません。

歯科治療で保険適用外のもの

歯科治療で保険適用外となる代表的なものを見ていきましょう。

歯列矯正

歯列矯正の治療は「噛み合わせが悪い歯を改善し、歯としての機能を回復させる」という目的がある他に、「歯並びを改善し、見た目を美しくする」という目的があります。この2つ目の目的が、病気のように治療に緊急性があるものではなく美容医療のような扱いとなるため、保険適用外となります。

ホワイトニング

ホワイトニングは歯を白くする美容目的の治療です。こちらも治療に緊急性がなく、ホワイトニングをしなくても健康を害するような病気になるわけではないとされ、保険適用外となります。

インプラント治療

虫歯や歯周病、怪我などで歯を失った場合に人工の根っこを顎の骨に埋め込み、人工歯を被せるインプラント治療も保険適用外となります。

インプラント治療は失った歯を補う目的があり、健康を維持するために必要なのに、なぜ保険適用外なんだろうと疑問に思う方もいるでしょう。

それは、インプラント治療は審美性を追求する目的の側面が強いため、保険適用の対象となる必要最低限の治療とは認められず、原則保険適用外の扱いとなります。

そのため、歯科医院によって費用設定は異なりますが、インプラント1本あたり30万円~50万円、そこに被せ物の費用がかかります。

歯列矯正はどうして保険適用外なの?

次に歯列矯正がなぜ保険適用外なのか見ていきましょう。

前述しましたが、保険が適用されるには病気であることと緊急性があるかどうかで判断されます。

歯列矯正は、「歯並びの見た目を良くする」という審美面を改善する治療として厚生労働省から見なされているため、保険適用外となっています。つまり、歯並びが悪い状態というのは、厚生労働省の観点では、見た目が悪いだけで、病的なものとは思われていないのです。

しかし、実際には歯並びが悪いと見た目だけの問題ではないことが多いです。歯並びが悪い状態のままにしておくと、虫歯や歯周病にかかりやすくなるだけでなく、噛み合わせが悪くなることで健康上の様々なトラブルを引き起こしかねません。

そのため、実際の矯正治療というのは「見た目を良くするだけでなく、歯並びの悪さが原因で引き起こされている歯や体のトラブルを改善する治療」とも言るため、病気に分類されてもよいのではと考えることもできますが、残念ながら保険適用外となっています。

歯列矯正が保険適用される場合もある?

歯列矯正が保険で受けられる場合もあると耳にしたことがあるかもしれません。保険が適応される症例とは、以下のような生まれつきの疾患があることが条件となります。

・顎の骨の手術を必要とする顎変形症
・国が指定している先天性疾患がある
・先天的に永久歯が6本以上ない

それぞれを解説します。

顎の骨の手術を必要とする顎変形症

顎変形症(がくへんけいしょう)とは、顎の骨の形や大きさ、位置が正常でなく、明らかな異常を認める状態のことです。

例えば、受け口や出っ歯、開咬の症状が重度なもので、通常の矯正治療では治せないような場合です。

このような状態は、骨の形に異常があって、食べ物をきちんと噛むことができない、発音障害を起こしているといった「病気」として認められているため、保険が適用されます。

国が指定している先天性疾患がある

生まれつきの病気である「先天性疾患」の中には、歯並びに異常を引き起こすものがあります。歯並びに異常があり、さらに国の認める23の疾患に該当すると、歯列矯正を保険適用で治療することができます。

23の疾患の代表的なものは、「唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)」、「ダウン症候群、」「トリチャーコリンズ症候群」などがあります。

先天的に永久歯が6本以上ない

永久歯の正常な本数は、上下合わせて合計28本(親知らずを除く)です。

しかし、中には永久歯が生まれつき少ない、生えてこない場合があります。2013年度より、生まれつき6本以上永久歯が足りない場合に限り、保険適用で歯列矯正を受けることができるようになりました。

歯列矯正を保険適用で受けるための制約

保険が使えて費用を抑えられることは利点なのですが、先述した先天性の疾患だけでなく、他にも条件や制約がいくつかあります。

国が指定した医療機関で治療を行うこと

保険適用で歯列矯正を受ける場合、どこの矯正歯科医院でも受けられるわけではなく、国が指定した医療機関で治療を受けることが条件となります。

顎変形症の場合には顎口腔機能診断ができる施設であること、先天性疾患の場合は指定の自立支援医療機関で治療を受ける必要があります。

健康保険に加入していること

保険で治療を受けるためには、いずれかの健康保険に加入している必要があります。

健康保険に加入していない場合は、先天性疾患があっても保険適用で歯列矯正を受けることができません。

この他にも、顎変形症の場合の歯列矯正は外科手術が必要で、外科手術をしない場合には保険が適用されません。

また、使用する矯正装置が限定され、目立たない矯正である舌側矯正(裏側矯正)やマウスピース矯正は行うことができません。なぜなら、保険適用の矯正治療はあくまで「機能の回復」が目的のため、審美目的の目立たない矯正は適応外となるからです。

まとめ

今回は、なぜ歯列矯正は保険適用外なのかについて解説しました。

歯列矯正は審美目的とされるため、保険外の治療となります。高額治療になる歯列矯正は、少しでも費用を抑えたいと考える方も多いですが、保険適用に該当するような症例は非常に少ないでしょう。

幼少期から顎関節症をお持ちの方や欠損歯がたくさんある方の場合は、治療相談やカウンセリングで保険適用になるかどうか判断ができるでしょう。

歯列矯正は高額になりますが、確定申告で医療費控除を申請すると治療費の一部が返却されます。治療費以外にも、公共交通機関で歯科医院に通われる場合はその費用も申告することができます。確定申告の際には歯科医師の診断書が必要となる場合があるため、矯正治療を始める際は歯科医師に確認してみましょう。

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