矯正治療は契約後でもキャンセルできる?キャンセルした場合の返金やリスクを解説
矯正治療を始める前は、治療後の歯並びや噛み合わせをイメージして契約すると思います。しかし、後になって治療に対する不安が押し寄せ、やっぱりキャンセルしたいと考える方もいるのではないでしょうか。
残念ながら現状のルールでは、矯正治療の契約自体はキャンセルできても、全額返金は難しい場合がほとんどです。そこで今回は、矯正治療の契約キャンセルと返金、リスクについて解説します。
矯正治療の契約はキャンセルできるが全額返金は難しい
結論から申し上げると、矯正治療の契約自体はキャンセルすることが可能です。何らかの理由で治療を受けたくない、治療をやめたいという患者様に歯科医師が無理強いをすることはできません。
ただし、矯正治療を契約後にキャンセルした場合、治療に関する費用の全額返金は難しいことがほとんどです。これは、矯正治療がクーリングオフの対象外とされているためです。
矯正治療がクーリングオフできない理由
矯正治療は医療行為のため、クーリングオフの対象になりません。そもそもクーリングオフとは、エステや通信販売などで適用されるルールで、特定商取引に関する法律の規定に基づき、契約締結後8日間以内であれば無条件でキャンセルできるというものです。
先に述べたとおり、矯正治療は専門知識を有した歯科医師による医療行為であり、必要性や適切性を考慮して提供されるものです。したがって、矯正治療は特定商取引に該当しないため、契約後の全額返金はできないものとされています。
矯正治療をキャンセルした場合の費用はどうなる?
矯正治療をキャンセルした場合は、原則全額返金はできません。ただし、日本臨床矯正歯科医会では「如何なる理由の中止であっても、治療の進行状況に合わせた清算をすること」と定められています。
日本臨床歯科医会で提唱されている診療報酬の清算目安は下記のとおりです。
治療のステップ |
返金額の目安(全額支払い済みの場合) |
全歯の整列 |
60〜70%程度 |
犬歯の移動 |
40〜60%程度 |
前歯の空隙閉鎖 |
30〜40%程度 |
仕上げ |
20〜30%程度 |
保定 |
0〜5%程度 |
引用:日本臨床矯正歯科医会
(https://www.jpao.jp/10orthodontic-dentistry/1015consultation/transfer/n-q92.html )
マウスピース矯正の場合は返金が難しい
ワイヤー矯正の場合は治療の進捗度合いに合わせた返金を受けられる可能性がありますが、マウスピース矯正の場合は返金がされないことがほとんどです。マウスピース矯正は使用する装置をすべて先に作製してから治療を開始するからです。
歯科医院は契約が締結されると、すぐにマウスピース型装置の作製を開始します。すでに作製された装置の費用は全て支払う必要があるため、返金を求めても費用が戻ってくることはほとんどありません。
矯正治療をキャンセルする前に確認すること
矯正治療をキャンセルする際は、契約書などで次のことを確認しましょう。
- キャンセルについての詳細
- 費用について
上記を確認せずにキャンセルを申し出ると、トラブルに発展する場合があります。ここで紹介する内容を確認し、可能であれば専門家に相談した上で歯科医院にキャンセルを申し出ましょう。
キャンセルについての詳細
矯正治療を開始する際は、契約書に署名・捺印をしていると思います。契約書にはキャンセルした場合の詳細が記載されているはずですので、キャンセルの際は十分に確認しておきましょう。
もしも契約書に違反する形でキャンセルを申し出ると、トラブルに発展する可能性があります。
費用について
矯正治療をキャンセルする際は、費用についても十分に確認しておきましょう。治療費を一括支払い、または分割払いしている場合は、費用の清算が必要になるからです。
また、歯科医院によってはキャンセル料を設けていることがあり、契約書にその詳細を記載していることがあります。なお、デンタルローンを利用している場合は、歯科医院と患者様、信販会社の三者で調整が必要です。
このようにキャンセルに関わる費用については内容が複雑になる可能性があるため、事前に契約書などで詳細を把握しておきましょう。
矯正治療をキャンセルする際のリスク
矯正治療をキャンセルする際は次のリスクが伴うことも把握しておきましょう。
- 理想の歯並びにならない
- 虫歯・歯周病のリスクが高まる
- 治療が長引く・費用がかさむ可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
理想の歯並びにならない
当たり前ですが、矯正治療をキャンセルした場合はその時点で治療を受けないことになるため、理想の歯並びにはなりません。また、治療の途中でキャンセルした場合は、後戻りをしてさらに歯並びが悪化する可能性があります。
虫歯・歯周病のリスクが高まる
歯並びが乱れていると虫歯や歯周病のリスクが高まります。隣り合う歯が重なっていたり噛み合わせが悪いと、歯ブラシが隅々まで届きにくく、磨き残しが発生しやすいからです。
矯正治療をキャンセルするということは、虫歯・歯周病のリスクが高いままにしておくということになります。そのため、気づいたときには虫歯や歯周病が進行しているケースも少なくありません。
治療が長引く・費用がかさむ可能性がある
矯正治療を途中でキャンセルし、他の歯科医院で再治療をしたいとなった場合、再び検査・治療プランの立案をすることになります。また、治療を中断している間に歯が動いてしまい、歯並びや噛み合わせがさらに悪化しているケースも少なくありません。
その場合、結果として治療期間が長引き、費用もかさむ可能性があります。
矯正治療を契約後にキャンセルしないために
ここまで解説してきたとおり、矯正治療を契約後にキャンセルすると様々なリスクが発生します。ここでは矯正治療を契約後にキャンセルしないための対策を、以下のポイントに沿って解説します。
- カウンセリングで疑問や不安を解消しておく
- 複数の歯科医院に相談する
- 実績のある歯科医院で治療を受ける
カウンセリングで疑問や不安を解消しておく
矯正治療を受ける前には必ずカウンセリングを受けると思いますが、その際はわからないことなどをしっかりと質問しておきましょう。質問を十分にしておくことで、治療に対する不安やストレスを軽減することができます。
もしも治療を開始してから不安や疑問を感じた際は、セカンドオピニオンを利用するのも一つの手です。通院している歯科医院とは別の歯科医院に話を聞いてもらうことで、不要なキャンセルを避けられる可能性があります。
複数の歯科医院に相談する
矯正治療を受ける際は、契約する前に複数の歯科医院へ相談に行きましょう。矯正治療に関する治療方針は歯科医院によって様々なため、納得のできる歯科医院を見つけることが重要です。
「矯正相談をしたら契約しなけらばならないのでは?」と心配される人もいるかもしれませんが、初回相談は契約を強制するものではありません。契約後のキャンセルを避けるためにも複数の歯科医院へ相談し、納得して治療を受けられる歯科医院を見つけましょう。
実績のある歯科医院で治療を受ける
矯正治療をキャンセルせずに成功させるためには、実績のある歯科医院で治療を受けることが重要です。矯正治療は専門的な知識と技術が求められる治療のため、しっかりと吟味して歯科医院を選びましょう。
矯正治療は契約前に不安を解消しておきましょう
いかがでしたか。
今回は矯正治療の契約後キャンセルについて、費用やリスクについて解説しました。矯正治療の契約はキャンセルすることが可能ですが、全額返金は原則不可能となっています。
契約後に後悔しないためにも、矯正治療を受ける際はしっかりと吟味して歯科医院を選び、不安を解消してから契約するようにしましょう。