歯列矯正をしたら体調不良も治るって本当?
矯正歯科医院に訪れる方の多くが「歯並びが悪くて見た目が気になる」と相談に来られます。
見た目を気にされる方が多いですが、実は歯並びの乱れが体調不良の原因になっている場合もあることをご存じでしょうか?
肩こりや頭痛、胃腸の不調、体の歪みなどの症状は、もしかすると歯並びの問題が影響しているかもしれません。歯列矯正によって歯並びや噛み合わせが改善されると、体調が良くなる可能性があります。
そこで今回は、歯列矯正によって体調がどのように変化するかについて解説します。
歯並びと体調不良の関係は?
歯並びが悪いと噛み合わせも悪くなることが多く、噛み合わせが悪いと全身のバランスに影響を及ぼします。また、噛み合わせが悪いために片側だけで噛む習慣がつくと、顎関節に負担がかかり、顔や体のバランスが崩れ、体調不良につながることがあります。
さらに、食べ物をしっかり噛めずに飲み込むと、消化に時間がかかり、胃腸に負担がかかるため、全身のだるさや栄養の吸収がうまくいかないといった不調を引き起こすこともあります。
どのような不調が起こり得るのか?
噛み合わせの悪さによって、以下のような不調が現れることがあります。
- 顎の痛み・顎関節症
- 頭痛
- 肩こり
- 腰痛
- 全身の倦怠感
- めまい
- 耳鳴り
- 手足のしびれ
- 便秘、下痢
- 食欲不振
- 睡眠不足、不眠
- 顔や体の歪み
- 歯周病
- 虫歯
このような体の不調は、自律神経の乱れや原因不明の「不定愁訴(ふていしょうそ)」として現れることも多く、噛み合わせが一因となっている場合も考えられます。
噛み合わせが心の健康にも影響する?
噛み合わせが悪いと、体調不良を引き起こしますが、心の不調にもつながる場合があります。
例えば、噛み合わせが原因の体調不良によってストレスがたまり、イライラや不安感を感じることがあります。
また、不眠や睡眠不足、食欲不振が続くと、心のバランスも崩れやすくなるため、心身ともに健康を損ねることが考えられます。
心の不調は悪化するとうつ病になる可能性も高まります。うつ病の直接の原因に噛み合わせが関係しているとは明確にいえませんが、噛み合わせが精神的なバランスに影響を及ぼすことを考えると、噛み合わせがうつ病と全く関係ないとは言い切れないでしょう。
歯列矯正で体調不良は改善できるのか?
噛み合わせの悪さが原因で不調がある場合、歯列矯正をして噛み合わせを正しくすると、体調が良くなることが期待できます。
以下のような歯並び・噛み合わせの方は、矯正治療で不調が軽減する可能性があります。
上顎前突(出っ歯)
上の前歯が飛び出ていて、噛み合わせのバランスを上下左右にずれていることが多いです。そのため、顎周りの筋肉に負担がかかり血流障害を起こしやすいです。
下顎前突(受け口)
噛んだ時に上顎より下顎が突き出ていて、上下逆の噛み合わせになっています。そのため、うまく物が噛み切れず、胃腸などの消化器官に負担がかかりやすくなります。
叢生(そうせい)
歯と顎の大きさが合わず、歯が重なったり捻じれたりするデコボコした歯並びのことです。噛み合わせが悪く物が噛みにくい、顎に負担がかかるといったことが起こりえます。
開咬
噛んだ時に奥歯しか噛み合わず、上下の前歯に隙間がある状態です。唇が閉じにくいため、口呼吸になったり、奥歯に負担がかかってしまいます。
過蓋咬合
噛んだ時に上の前歯が下の前歯を半分以上覆う噛み合わせのことです。噛む力が強くなりがちなため、歯にヒビなどが入ることもあります。
交叉咬合
部分的に下の奥歯が上の奥歯より外側なってしまう噛み合わせのことです。一部の歯への負担が大きくなりがちです。
欠損歯がある
欠損している箇所を補おうと両隣の歯に負担がきたり、反対側ばかりで物を噛んでしまうようになります。
上記のような噛み合わせの場合、一部の歯や顎関節に負担がかかり、前述したような体調不良が引き起こされている可能性があります。
そのため、不調の原因となっている噛み合わせの悪さが改善すれば、体や心のバランスが整いやすくなる可能性があります。
噛み合わせが良くなると体にどんな変化がある?
正しい噛み合わせになると、体調不良の改善のほかにも、さまざまな変化が期待できます。
- 顔や体の歪みが改善
- 顎関節症の緩和・改善
- 肩こりの緩和・改善
- 虫歯や歯周病になりにくくなる
- 滑舌の改善
- 食事がしやすくなる・物を噛みやすくなる
1つ1つは小さなことでも、さまざまな不具合が改善されることで、長年の体調不良や心の不調が緩和・改善したと感じる方もいるようです。
矯正治療だけに頼らない生活改善も大切
歯列矯正と体調不良が関係しているとわかれば、慢性的な不調を改善させるために歯列矯正をしようと治療に大きな期待をされる方もいるでしょう。
たしかに歯列矯正をすることで長年の体調不良が改善する可能性は十分にありますが、歯列矯正は体調不良を治すための治療法ではないこと、注意すべき点、デメリットもあります。
歯列矯正にはデメリットがある
歯列矯正によって噛み合わせが正しくなることで、さまざまな不調が改善し、心身ともによい変化を感じる場合があります。
しかし、矯正には数年かかる場合が多く、途中で痛みや、一時的に以前より食事がしにくくなるといった違和感が生じることもあります。
矯正治療が終了しても、すぐに体調がよくなったことを実感できるとは限りません。体調の変化も少しずつ起こる、また歯列矯正を行ったからといって必ずしも全ての体調不良が改善するわけではないことを覚えておきましょう。
歯科医師と理想像をしっかり話し合う
歯列矯正は歯並びや噛み合わせを治すための治療方法のため、今抱えている体調不良が必ず改善するとは言い切れません。
また、治療開始前には歯並びの悩みだけでなく、体調不良の改善も期待していることを歯科医師に必ず伝えましょう。
ストレスを解消する
体調不良はストレスから引き起こされていることもあります。そのため、日頃からストレスをためないこと、ストレスを解消するよう心がけましょう。
ストレス解消法はさまざまですが、暴飲暴食は体に負担をかけるので避けたほうがよいでしょう。
また、歯列矯正を開始すると、食事がしにくい、見た目が気になる、口の中に違和感があるなど不都合があり、それがストレスになることがあります。
矯正治療終了後の歯並びや体調不良が改善した自分を想像したり、趣味を楽しんだり身体を動かすなど、口に意識を向けすぎないようにするのも一つです。
生活習慣を見直す
体調不良は、長年の日常生活の癖などが原因となるる場合もあります。
頬杖をつく、足を組む、荷物を片側ばかりで持つ、同じ側を下にして寝る、高さが合っていない枕を使う、猫背、よく噛まずに飲み込む、早食いなども体調不良の原因となります。
これらを日常的に行っていると、噛み合わせを整えても体調不良はなかなか改善せず、さらにせっかく整えた噛み合わせが後戻りしてしまう可能性もあります。
そのため、歯列矯正だけに頼るのではなく、日頃の生活を見直してみましょう。
まとめ
歯列矯正は、歯並びと噛み合わせを改善させるだけでなく、体調不良を改善できる可能性がある治療です。
噛み合わせは体全体にさまざまな影響を与えるため、原因不明の体調不良が噛み合わせからくるものだったというケースも少なくありません。
そのため、噛み合わせに違和感や支障をきたしている方は、放置してしまうと症状が悪化する恐れもあります。
原因不明の体調不良がある場合、一度歯並びや噛み合わせについて歯科医師に相談してみるのも一つの方法です。