矯正用インプラントについて
矯正用インプラントの利用目的
矯正用インプラントの利用目的は主に2つあります。 1つ目は、前歯に用いる場合で、ガミースマイルの治療です。 2つ目は、奥歯に用いる場合で、前歯を引っ張る際の固定源を増強させるために使用します。
矯正用インプラントでガミースマイルを治療できる
「ガミースマイル」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。 「ガム(gum)」は、英語で「歯茎」の意味で、歯茎が見えてしまう笑顔のことを指しています。ガミースマイルの原因は、上の前歯6本が下の方に全体的に下がってしまっているためです。基本的には、噛み合わせが深い状態にある「過蓋咬合」であることが多いです。ただし、厳密にはこの過蓋咬合とガミースマイルは別物で、イコールではありません。 ガミ―スマイルは、上の前歯6本を上に持ち上げることで解消されます。歯と連動して歯茎も上がりますから、笑顔になっても歯茎が見えることはなくなります。
具体的な治療は、次のような流れで行います
1.歯の裏側に矯正器具を取り付けて、前歯6本を連結させます。 2.歯の表側に取り付けた透明なボタンからインプラントにかけて、透明なゴムを渡します。
金属のインプラントから、真ん中から2番目の前歯にかけて透明なゴムを渡し、また、真ん中から2番目の歯の根元の部分に透明なボタンがくっつけてあります。こうすることによって、連結された前歯6本が上に引っ張られます。その結果、歯茎も連動して持ち上がり、ガミースマイルが改善されるのです。
ガミースマイルはあくまで見た目の問題だけで、健康面には支障はありませんが、気になる方はとても多くいらっしゃいます。矯正インプラントを用いて、きれいな笑顔をつくっていきましょう。
矯正用インプラントのメリット
矯正用インプラントのメリットは、何と言っても、「固定源を新たに作ることができる」点です。 本来、インプラントを用いない場合は、前歯を引き上げるための固定源がありません。しかし、矯正用インプラントを埋め込むことで新たな固定源を作り、ガミースマイルの施術のように、希望通りの方向に動かすことが可能になったのです。
また、出っ歯の治療をより効果的に行えるようになりました。 出歯を矯正する場合、矯正用インプラントは奥歯に埋め込みます。そして、奥歯にあるインプラントを固定源としてゴムで繋ぎ、前歯を後ろに引っ張っていきます。引っ張られても、場所がなければ歯は動けないため、通常は前から4番目の奥歯を抜歯してスペースを作ります。 しかし、従来の矯正用インプラントを用いない治療では、奥歯が固定源となっていたため、実際の奥歯と前歯が引っ張り合うことで双方に力がかかります。そのため、抜歯スペースの約2/3は前歯が下がることで塞がり、残りの1/3は、逆に奥歯が2~3㎜程度前に出てくることで塞がれてしまいます。このように、歯の反作用により、動かす必要のない奥歯も動いてしまっていたのです。 ところが、インプラントを奥歯に入れて、そこにゴムを掛けて前歯6本を引っ張ると、奥歯が全く前にずれることなく、前歯6本だけを内側に引っ張ることができます。つまり、矯正用インプラントを用いることで、フルに抜歯スペースを活用することができるのです。例えば、抜歯スペースが7mmある場合、その7mmをフルに前歯6本を動かすために使えることになります。 動かしたい前歯の可動域が広がっただけでなく、前歯以外の歯に影響が出ることもなくなりました。
矯正用インプラントのデメリット
◇インプラントは「外科手術」
インプラントは手軽な方法であるとはいえ、麻酔をかけて体に異物を埋め込む「外科手術」であるということに変わりはありません。手術自体は3分ほどで終わる非常に簡単なものですが、治療後の腫れや痛みなどを訴えられる方も稀にいらっしゃいます。
◇歯茎へのダメージ
埋め込んだインプラントにゴムを引っ掛け、動かしたい歯と引き合いをさせるため、ゴムが歯茎に食い込んで痛みが生じる場合があります。食い込んでしまうかどうかは、歯茎の形状によるところが大きく影響します。
◇抜けやすい
矯正用インプラントは、直径が2㎜前後、長さが1cm程度と、非常に小さいものです。通常のインプラントは直径が4~5mm程度で長さも2cmくらいあるため、比べてみても、大きさが全然違います。 その小ささゆえに、割と抜けやすいということも事実です。常時、ゴムで引っ張っているため、その力に耐えきれなくなると抜けてしまうこともありますが、その際は骨が丈夫そうな厚みのあるところに新しいものを打ち直します。もちろん、打ち直しは無料です。
◇費用がかかる
通常の矯正に比べ、どうしてもコストはかかります。1本あたり15,000円ですが、だいたい2本セットで施術を行う方が多いため、その場合の1回あたりの費用は30,000円となります。