矯正治療を始めるにあたり、マウスピース矯正を検討・選択される方が増えてきています。
マウスピース矯正にはいくつか種類がありますが、なかでもインビザラインを選ぶ方が増えてきています。
もしかしたら知り合いで、インビザライン治療をされている方もいるのではないでしょうか？
治療実績が増えてきているインビザラインですが、検索すると「効果がなかった」という評価を目にすることもあります。
このような記事を目にすると「インビザラインをしても効果がないのでは？」と思う方もいらっしゃいますよね。
今回は、実際にインビザラインは効果があるか、効果を実感できない場合の理由を解説していきます。

まずはインビザラインについて簡単に説明します。
インビザラインとは、アメリカのアライン・テクノロジー社が開発した、歯並びを改善するマウスピース型のカスタムメイド矯正装置です。
理想の歯並びになるようコンピューターでシミュレーションし、カスタムメイドされたアライナー（マウスピース）を2週間に1回くらいのペースで、ご自身で交換しながら歯並びを改善させていきます。
マウスピースは薄く透明で目立たないため、従来のワイヤー矯正と比べると見た目を気にせず快適に使用でき、1999年にアメリカで販売を開始して以来、世界100ヶ国以上、2022年9月時点で1400万人以上の方が使用されています。（インビザライン公式ホームページよりhttps://www.invisalign.co.jp/）

インビザラインの特徴と効果は

• マウスピースが透明のため目立ちにくい
• 取り外しができるため歯ブラシがしやすく、虫歯のリスクが少ない
• 1枚のアライナーの移動量は少ないため痛みが少ない
• ワイヤー矯正と違い凹凸があまりないため、装着時の違和感が少ない
• 金属アレルギーの心配がない
• ホワイトニングも同時に可能
• 通院回数が少ない
• 口内炎ができにくい

などがあります。

どのような原理で歯を動かしているのかというと、インビザラインに限らず、歯列矯正は矯正装置をつけることで歯に圧力をかけ歯並びを整えていきます。

なかでもインビザラインは、理想の歯並びに近づけるためコンピューターが段階的に歯が動いた状態をシミュレーションしたアライナーを約50枚ほど作製します。
まずは現在の自分の歯並びに近いアライナーから装着していき、歯に力を加えながら徐々に歯を移動させていきます。

ちなみに、ワイヤー矯正は歯並びに合わせて歯科医師がワイヤーを調整し、ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯を移動させます。

インビザラインもワイヤー矯正も同じ原理で歯を動かしているため、装置は異なりますが、歯並びの改善という目的に対して同じような効果があるといわれています。

では、ワイヤー矯正と同様の効果があるインビザラインなのに、なぜ効果がないといわれるのでしょうか？
ワイヤー矯正と比べると、まだまだ新しい治療法で患者数が少なく、治療法が浸透していないことが「効果がない、実感できない」と思われる理由の一つといえるでしょう。

インビザラインは効果がないと思われてしまう理由がいくつかあるので、一つずつ解説していきます。

インビザラインはワイヤー矯正と比べると、矯正中に感じる痛みが少ないです。
痛みが少ないことはメリットにもなりますが、痛みが少ないと、歯がちゃんと動いているのか不安に思われる方もいるでしょう。

しかし、痛みが少ないからといって矯正治療がうまくいっていないわけではありません。
インビザラインの痛みが少ない理由は、歯にかかる圧力がワイヤー矯正と比べると少なく、アライナー1枚毎の歯が移動できる距離が短いからです。

通常ワイヤー矯正は、1ヶ月に一度ワイヤーを交換・調整し歯並びを整えていきます。
この時に歯に強い圧力がかかるので痛みを感じます。

これはインビザラインも同じで、アライナーを交換することで、歯に圧力がかかり歯並びを整えることができます。
アライナーの交換は1ヶ月に2回ほど行います。
ワイヤー矯正と比べ装置の交換頻度が増えることにより、1回の歯にかかる圧力が少なく、痛みが比較的少なくなります。

インビザラインでは1枚のアライナーで歯を動かせる距離が0.25mmで、満遍なく歯全体に圧力がかかります。
そのため、どの歯が動いているかが分かりにくく「効果がないのでは？」と不安になってしまう方がいます。

一方、ワイヤー矯正は、装置の調整毎に歯に痛みを感じることで、どの歯が動いているのかが実感しやすいという特徴があります。
そのため「効果がある」と感じる方が多いです。

歯列矯正で1ヶ月に歯を動かせる距離は最大1mmといわれており、無理に動かしたからといって歯が早く移動するわけではなく、過剰な力を歯に加えてしまうと、歯の根っこや歯ぐきにダメージを与えてしまうリスクがあります。

これは、どの矯正治療にもいえることです。

インビザラインは、アライナーを装着し始めてから早い段階で効果を実感することは残念ながらほぼありません。
矯正治療が終了する頃には、ほぼほぼ歯並びや噛み合わせが整い、効果を実感できるようになります。
ですので、治療途中ではあまり効果を実感することができない場合もあります。

先程もお伝えしましたが、インビザラインは1枚のアライナーで0.25mm歯を動かすことができます。
もし2週間に1枚交換したとすれば1ヶ月で0.5 mm動きます。
少しずつ歯を動かしていくため、全く動いていないと感じたり、効果がわかりにくいかもしれませんが、アライナーを交換すればするほど、歯が動いていることが実感しやすくなります。

矯正治療全般にいえることですが、治療の効果や歯並びが整ってきたと実感できるまでにはどうしても期間がかかります。
治療期間はおおよそ2〜3年かかるため、どのタイミングで効果を実感するのかは人それぞれになります。

インビザラインは装着時間が決まっており、1日に20時間以上使用しないと効果がなかなか出ません。
そのため、ご飯を食べる時と歯を磨く時以外は装着する必要があります。

また、アライナーの交換のタイミングを守らないと歯がシミュレーション通りに動いていかないため、効果があまり出ません。

インビザラインでは、歯を動かす時にアタッチメントと呼ばれるものを歯につけることがあります。
このアタッチメントが取れてしまった時、歯科医師に相談せずそのままにしていると、計画通りに歯が動かない可能性が高まります。

また、取り外しの時にアライナーにヒビが入ったり壊れてしまうことがあります。
ヒビが入ったまま使用すると、歯にうまく力が加わらず、思ったより動かないということが起こります。
そして、壊れてしまったからといって、次のアライナーを使ってもうまく歯にはまらない場合があります。

ですので、装置が故障・破損した場合は、速やかに歯科医師に相談してください。

インビザラインの設計をクリンチェックといいますが、これはコンピューター上で行います。
歯科医師側がインビザラインを理解していないと、このクリンチェックが適当なものになってしまいます。
クリンチェックは非常に重要で、患者さんがどんなに正しくアライナーを使っても、ここがダメだと歯並びが改善せず、効果を実感することができません。

歯科医師の指示通りにアライナーの装着やゴムかけをきちんとしていたのに矯正の効果が出ない場合は、根本的に治療計画に問題がある可能性があります。

同じ歯列矯正でも、ワイヤー矯正とは異なるインビザラインならではの知識や技術が必要となり、それがあまりない歯科医師が担当した場合、適切な治療計画が立てられない可能性もあります。

このようなリスクを回避するためにも、インビザラインの治療経験豊富な歯科医師を探すとよいでしょう。

実際にインビザラインは効果があるのか、効果を実感できない場合について解説しました。

インビザラインは、ワイヤー矯正と同じレベルに歯並びを綺麗にする効果があります。
しかし、絶対に効果があるというわけではなく

• 装着時間、日数を守る
• 定期的に通院する
• 装置に不具合があれば放置しない

これらを徹底しなければ、せっかく矯正をしているのに効果が得られません。

インビザラインは患者さん自身が自由に矯正装置を取り外しできるメリットがある反面、自己管理がとても重要になります。

このことをしっかりと理解した上で、信頼する歯科医師のもとでインビザラインの治療を始める・進めるとよいでしょう。