前歯だけならマウスピース矯正で短期間で治せる?

歯列矯正は装置が目立つ、治療期間が長い、費用が高い、といった理由でなかなか治療に踏み出せない方もいるでしょう。

前歯だけ治したい場合、部分的に矯正治療をすることができるのをご存知ですか?
また近年、目立たない装置として人気が高まっているマウスピース矯正も前歯だけを治すこともできます。

前歯だけなら短期間で治るのでは?と思われるのではないでしょうか?

そこで今回は、前歯だけならマウスピース矯正で短期間で治せるのか解説していきます。

前歯だけの矯正とは?

前歯だけの矯正、いわゆる部分矯正は、歯列全体ではなく部分的に歯を動かす矯正方法のことです。部分矯正にもいくつか方法があり、マウスピース装置を使う方法をマウスピース部分矯正といいます。

そして、前歯は真ん中の歯から数えて3番目、犬歯または糸切り歯と呼ばれる歯までを指し、上下左右合わせて12本になります。前歯だけの部分矯正の場合、この12本を整えることになります。

前歯だけを治すといえど、3番目の犬歯までを覆う部分的なマウスピースはなく、 全体のマウスピース矯正と同様に奥歯まで含めた形になります。そのため、お口全体に異物感があり慣れるまでは違和感が出ることがあります。

治療期間はどれくらい?

全体を動かすマウスピース矯正は、治療完了まで1〜3年といわれています。前歯だけだと動かす本数が少ないため、3ヶ月〜1年前後といわれており、1年以内に治療が終わることが多いです。

短期間で治療を終えることができるため、入学や就職、結婚式などのイベントを控えている方におすすめです。

どうして短期間でできる?

前歯の部分矯正が短期間でできる理由は、歯の根っこの構造にあります。前歯の根っこは1本、奥歯の根っこは2〜4本からなります。奥歯は、物を噛んだりして負荷がかかるため、負荷に耐えられるよう根っこの本数が多く、頑丈です。

一方、前歯は根っこが1本のため比較的動かしやすく、動かす範囲も限定されているため、短期間で治療することができます。

前歯だけのマウスピース矯正のメリット

全体を整えるのと比べ、前歯だけだからこそのメリットがあります。

費用が安い

前歯だけですと、全体と比べ約半分の費用で治療を受けることができる場合があります。矯正治療は自由診療のため歯科医院によって異なるので、費用面が気になる方は何件かの矯正歯科の費用を見比べてみてもよいでしょう。

治療期間が短い

前述しましたが、前歯のみの矯正は3ヶ月〜1年ほどで治療が完了します。使用するマウスピースの枚数も通常の半分くらいになります。

全体を治す矯正治療は1~3年の治療期間が必要になるため、前歯のみの矯正は短期間で終了することが分かると思います。

痛みが少ない

奥歯までマウスピースをはめますが、動かすのは前歯だけのため、痛みや不快感も少なくなります。痛みの具合は個人差がありますが、マウスピース矯正はもともと痛みの少ない矯正方法です。前歯のみを治療することで、さらに痛みが軽減されます。

前歯だけのマウスピース矯正のデメリット

前歯だけだからこそのデメリットもあります。

出っ歯になることがある

前歯がデコボコになったのは、歯がきれいに並ぶスペースが足りないために起こっていることがほとんどです。また、歯は前方に動いたり傾いたりする習性があります。それにより、前歯だけのマウスピース矯正で少ないスペースに歯を並べても、治す前より全体的に歯が前に出て、出っ歯のようになってしまうことがあります。

判断が難しいですが、しっかりと検査を行い、前歯の部分矯正ではなく、全体を動かす治療が必要となる可能性があります。

理想が高い人には向かない

前歯だけのマウスピース矯正は、気になる部分を短期間で費用を抑えて、ある程度きれいに治したい方に向いている方法です。そのため完璧できれいな歯並びを目指している方には向かない可能性があります。また、正常な噛み合わせでない場合は、前歯だけの部分矯正ができない可能性が高いでしょう。

歯を削ることがある

前歯だけをきれいに並べるため、基本的に歯を抜かずに治療を行います。しかし、歯を動かすスペースを確保するため、ディスキングという歯と歯の間を少し削る処置が必要な場合があります。

削るといっても、通常1箇所あたり最大0.5mm程のため見た目にはほとんどわからず、削ったことによって虫歯になるリスクが高くなったというエビデンスもありません。

隙間を閉じられない場合がある

上の前歯の歯と歯の間にある隙間を閉じたい方も多いでしょう。この歯並びの場合、下の前歯の状態が密接に関わってきます。下顎の前歯の歯と歯の間にも隙間がある場合は、上下両方とも前歯の隙間を減らしていくことが可能です。

しかし、下の前歯の歯と歯の間に隙間がなく、さらに下の前歯が上の前歯の裏側に噛み込んでいる場合には、上の前歯の隙間を閉じることが難しいです。この状態ですと、隙間を閉じるためには、前歯だけの部分矯正ではなく、全体の矯正治療が必要となります。

前歯だけのマウスピース矯正で改善できる歯並び

前歯だけを治したい場合、どのような歯並びであれば部分矯正で解決できるのか解説していきます。

軽度の叢生(そうせい)

前歯の歯並びが少しだけデコボコとしていたり重なっている「叢生」(または乱ぐい歯)は、目立つ歯並びのため治したいという方も多いです。

八重歯を含む重度の叢生でなければ、前歯だけのマウスピース矯正で解決できます。

捻転(ねんてん)・傾斜

少し捻れて生えている、少しだけ傾いている、このような歯並びの方も多いでしょう。この場合も、部分矯正で解決でき、1本だけの場合はより短期間で改善できることが多いです。

空隙歯列(くうげきしれつ)

歯と歯の間に隙間がある状態を「空隙歯列」、「すきっ歯」といい、上の中央にある前歯に隙間があるケースを「正中離開(せいちゅうりかい)」と呼びます。歯と歯の間にある隙間は、息が漏れることにより発音障害があったり、見た目が悪いというデメリットがあるため、治したい方も多いでしょう。

こちらも前歯だけの矯正で解決できます。

前歯が大きい

前歯のサイズが大きいことで悩んでいる方もいらっしゃいます。前歯が大きいと、スペースがなく出っ歯のようになることがあり、見た目の改善を希望する方も多いです。

前歯のサイズが大きいケースでは、歯を削ることもあります。しかし、隣の歯より外側に飛び出ている場合は、矯正治療で歯並びを整えることで、歯の大きさを目立ちにくくすることができます。

前歯だけのマウスピース矯正では改善が難しい歯並び

残念ながら前歯だけの部分矯正では歯並びの改善が難しいものもあります。

あくまでも目安になりますが、以下の場合は前歯だけのマウスピース矯正では改善が難しいでしょう。

噛み合わせに問題がある

矯正治療は歯並びをきれいにするだけでなく、正しい噛み合わせにすることが重要です。前歯だけのマウスピース矯正では、前歯をきれいに並べることができても、奥歯の噛み合わせを治すことはできません。

そのため、噛み合わせに問題がある場合は、奥歯の噛み合わせも同時に治せる全体矯正をしたほうがいいでしょう。

矯正をするには歯を抜く必要がある

歯をきれいに並べるために抜歯が必要になるほどのスペース不足の場合は、 大幅に歯を動かさなければなりません。この場合も、全体矯正で歯並びを改善させたほうがいいでしょう。

重度の歯周病

矯正治療は顎の骨に埋まっている歯を動かすため、重度の歯周病になっている方は、前歯だけのマウスピース矯正だけでなく、ワイヤー矯正を含めたすべての矯正治療をすることが難しい可能性があります。

矯正治療で歯を動かす時、負荷が加わることで骨が溶け、歯が動くスペースができます。通常ですと、歯の位置が固定されると徐々に骨が再生され、元に戻ります。しかし重度の歯周病になると、元々の歯を支えている骨が少なく、骨の再生が難しく、最悪の場合、動かした時に歯が抜けてしまうことがあります。また、歯を一度きれいに並べても歯の位置が固定されず、すぐに元の位置に戻ってしまうこともあります。

重度の歯周病があるがどうしても矯正治療を受けたい方は、まずは歯周病の治療をしっかり行い、状態が安定してからにしましょう。

まとめ

前歯だけ歯並びをきれいにするマウスピース矯正は、通常より短期間ででき、費用も抑えられるなど、非常に魅力的な治療方法の1つです。しかし、 すべての方ができるわけではなくデメリットもあります。そのため、まずは部分矯正ができるのか検査を受け、どういう仕上がりになるか、しっかりと診断、説明をしてもらうことが重要になります。

矯正治療を何度も受けたり、部分矯正完了から数年後に全体矯正をすることにならないよう、前歯の悩みや理想の歯並びについて歯科医師としっかりと話し合うことで、きれいで理想的な歯並びに近づけるでしょう。

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